|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(5) 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)を合併した未熟奇形腫の一例
安江 正憲, 小金井 宏美, 古川 真希子, 清水 八尋, 濱野 聡, 千島 史尚, 早川 智, 栃木 明人, 坂元 秀樹, 山本 樹生
日本大学産婦人科
SIADH(Syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)は,ADHが血漿浸透圧の調節を逸脱して不適切に分泌される病態である.今回SIADHを合併した卵巣未熟奇形腫の稀な一例を経験したので報告する.症例は18歳 0回経妊0回経産 平成14年12月腹部膨満感を主訴に当院紹介受診となった.診察と超音波検査において巨大卵巣腫瘍を認めた.CT,MRI検査では充実性で一部に石灰化と嚢胞成分を含む腫瘍を認めた.CA125は857.7U/mlと高値を示した.入院時の血清Naが126mEq/lと低値であったため精査した所,ADHは22.8pg/mlと高値を認めSIADHの診断となった.治療を開始し低Na血症が改善したため手術を施行した.開腹時,腹水は淡黄色少量で,肝臓下縁に及ぶ27×26×12cmの巨大な右卵巣腫瘍を認めた.ダグラス窩,大網,壁側腹膜に播種性病変を認め,右付属器切除,大網部分切除,ダグラス窩,腹膜播種性病変部分切除を施行した.病理組織診断はImmature teratoma of right ovary,Grade Iであり播種病変はMature peritoneal gliomatosisであった.以上の所見より化学療法は施行せず,外来にて経過観察中である.腫瘍摘出後の血液検査所見は全て正常化し再燃はなく,経過からは未熟奇形腫による二次性のADH産生によるSIADHが最も考えられた.また,内分泌疾患を伴う症例では周術期の電解質管理が重要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
174-174, 2003
|