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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(5) 卵巣borderline malignancy of clear cell tumorの1例
長谷川 亜希子, 高田 恭臣, 川名 敬, 森 繭代, 中川 俊介, 八杉 利治, 久具 宏司, 上妻 志郎, 堤 治, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
【背景】卵巣原発の明細胞腫瘍のうち,大多数の症例は悪性腫瘍であり,境界悪性の症例は極めて稀である.我々は卵巣境界悪性明細胞腫瘍の1例を経験したので報告する.【症例】58歳3経妊2経産.他科受診中に卵巣腫瘍を指摘され,内診,超音波で左付属器に径10cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認めた.CA125:195,CA19−9:279と高値であり,CT,MRI,超音波の所見から卵巣癌が疑われ手術となった.術中迅速組織診では卵巣腫瘍は腺癌,腹水細胞診はclass5であったため,術式を単純子宮全摘,両側付属器切除,骨盤リンパ節郭清,傍大動脈リンパ節郭清,部分大網切除とした.永久標本の病理診断は境界悪性明細胞腫瘍であり,豊富な結合組織の増生の中に一層の立方状や扁平化した核異型の弱い上皮で裏打ちされた嚢胞が散在し,嚢胞壁の一部に腫大した核がhobnail状に突出している部分が認められた.また淡明な細胞質と核小体明瞭な核を有する細胞が少数集簇している部分も散見された.間質浸潤,リンパ節転移,右卵巣や子宮の腫瘍は認められなかった.腹水および2ヶ所の腹腔内擦過細胞診(右横隔膜下面,右傍結腸窩)で明細胞腫瘍と同様の腫瘍細胞を認め,pTNMはpT1c2N0M0で臨床進行期Icとなった.以上より術後補助療法としてTJ療法を3コース施行し,現在無病生存中である.【まとめ】卵巣境界悪性明細胞腫瘍は概ね予後良好な疾患であるが再発を認めた症例報告も散見される.症例数が少ないため治療の選択は確立していないが,今回我々はpT1cであったことを重視し術後化学療法を追加した.今後更なる症例の蓄積が必要であると考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
175-175, 2003
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