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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
感染症(2) 二絨毛膜性双胎の一方にIUGRを認めた先天性サイトメガロ感染の1例
久保田 一郎, 小林 洋子, 佐藤 伊知朗, 松川 高久, 雨宮 厚仁, 滝澤 基, 佐々木 重胤, 白石 眞貴, 池上 淳, 寺本 勝寛
山梨県立中央病院周産期センター母性科
【はじめに】サイトメガロウイルス(CMV)はTORCH症候群のなかでもっとも頻度の高い母児感染の原因ウイルスであり,その頻度は0.4〜1%とされる.また,近年のCMV抗体保有率の低下により先天性CMV感染は増加が予測される一方,その治療法はいまだ確立されていない.今回我々は妊娠21週より一方の児のIUGRがみられ,その原因が発症時期の違いに起因すると推測される二絨毛膜性双胎の先天性CMV感染の1例を経験したので報告する.【症例】28歳0経妊0経産,妊娠4週0日当院初診.妊娠9週頃,感冒様症状があった.21週1日超音波断層検査にて一方の児のみの発育遅延(BPD19週4日相当)がみられた.24週1日の超音波検査では,臍帯動脈の拡張期逆流,心嚢液の貯留等の所見もあり,同日管理目的にて入院とした.CMVIgM(+)のため先天性CMV感染を疑い,またもう一方の児の発育遅延も出現したため,29週1日帝王切開による分娩を選択した.児は第一子1190g女児Apgar7点,第二子732g女児Apgar3点.胎盤は分離胎盤で,羊膜で接していた.第一子は出生直後のCMVIgM,Agは陰性であったが,日齢4より汎血球減少と肺炎が出現.日齢6より肝機能の上昇を認め,日齢26にはCMVIgM,Agともに陽転した.第二子は出生直後より著明な肝脾腫と点状出血を認め,CMVIgM,Agともに陽性だった.【結語】二絨毛膜性双胎の一方の児にIUGRを認めた場合,臍帯卵膜付着,胎児奇形等の他,経胎盤感染を起こす先天性CMV感染を含めた感染症を疑う必要がある.また,両児共に経胎盤感染による胎内感染が成立していたが,その発症時期の相違により一方の児のみに著明なIUGRをもたらしたと推測された.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
186-186, 2003
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