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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
不妊 高齢不妊女性に対する腹腔鏡検査の有用性に関する検討〜原因不明不妊を中心に〜
中村 久基, 甲賀 かをり, 藤原 敏博, 中川 俊介, 難波 聡, 藤本 晃久, 大須賀 穣, 西井 修, 久具 宏司, 矢野 哲, 堤 治, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
目的:当科では,初期スクリーニングで原因の検出されない原因不明不妊症例に対しては,排卵誘発,人工授精などの治療を開始し,妊娠に至らなかった症例に対して,腹腔鏡検査を行っている.腹腔鏡検査で卵管周囲軽度癒着,子宮内膜症初期病変などの器質的病変が発見された場合には,同時に癒着剥離,病巣焼灼などの処置を行っている.昨今の報告では,腹腔鏡検査は省略し,早期にARTへの移行を推奨するべきといった意見も散見されるようになったが,今回我々は特に高齢原因不明不妊女性に対する腹腔鏡検査の意義を再検討することを目的とし本研究を行った.方法:当科において1996―2001年に腹腔鏡を施行した127例を対象とし,対象症例を適応別,腹腔鏡所見別,さらに35歳未満と以上に区分し,各群の腹腔鏡後の妊娠率と妊娠に至るまでに要する期間を統計学的に検討した.結果:原因不明の適応で腹腔鏡を施行した症例は60例であった.そのうち30例に腹腔内に器質的病変が発見された.35歳以上の症例に限定すると,原因不明の適応で腹腔鏡を施行し,実際に腹腔内に病変が全くなかった群では術後妊娠率は低かったが(術後6ヶ月累積妊娠率6.7%),病変が発見され,それに対する処置を受けた群では妊娠率は高かった(同26.7%).考察:35歳以上の原因不明不妊症例でも,腹腔鏡検査によって腹腔内病変が発見され,処置を受けた群では術後の妊娠が期待できることがわかった.病変を認めなかった症例では術後妊娠率は低いため,早期にARTへの移行を薦めるのが妥当と考えられた.以上より35歳以上の原因不明不妊に対しても,腹腔鏡は診断的・治療的意義があると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
192-192, 2003
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