|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
内膜症・その他 水腎症を合併した骨盤深部子宮内膜症の一例
根岸 靖幸, 渡辺 美千明, 山田 隆, 米山 剛一, 土居 大祐, 八田 充子, 柴田 浩之, 武井 麟太郎, 明楽 重夫, 竹下 俊行, 朝倉 啓文, 荒木 勤
日本医科大学女性診療科
子宮内膜症病変が尿管に及ぶことは極めて稀れである.患者本人の承諾を得て報告する.【症例】40歳未婚・未経妊婦.健診で右水腎症を指摘,近医泌尿器科から右の尿管狭窄と無機能腎,子宮頸癌の疑いで紹介された.内診上,子宮は小児頭大で可動性不良,多発性子宮筋腫を認めた.子宮腟部は正常所見.腟管上部は狭小化し子宮傍組織・腟傍組織および膀胱後壁と直腸下部全周に硬結を触知し進行子宮頸癌を疑わせたが,病理学的に子宮頸部および内膜に悪性所見は認めなかった.排尿時の違和感を訴えたが膀胱鏡検査で膀胱粘膜に異常を認めず,逆行性尿路造影で右尿管下部狭窄,レノグラムにより右腎機能は廃絶と診断された.腫瘍マーカーCA125 42U/ml,CA19−9 140U/ml,SCC 1.7ng/mlと上昇.消化器悪性腫瘍の骨盤腹膜転移を疑い精査.腹部CT,胃十二指腸および大腸ファイバースコープ診,注腸造影を施行し消化管悪性腫瘍は除外された.【診断】右水腎症合併,腟壁浸潤を伴う広範囲な骨盤深部子宮内膜症.【治療】尿路系の症状は手術によって改善は期待できないことなどを患者に充分に説明.左尿管にステントを挿入後,腹式単純子宮全摘術を施行した.右尿管は著明に拡張し子宮動脈交叉部に強固な繊維性癒着を認めた.肉眼的にダグラス窩・腟管周囲・膀胱後壁および子宮頸部筋層内に至る子宮内膜症性病変を認め,病理組織診で確認された.術後,GnRHa(リュープロレリン3.75mg)の使用を開始し,現在に至っている.【考察】本症例は,KoninckxらによるRecto-vaginal endometriosis分類type3(deeply infiltrating),Rippsらの述べるdeep fibrotic lesionであると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
193-193, 2003
|