|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
血栓塞栓症 個人輸入による低用量ピル服用により発生した肺梗塞の一例
三宅 勝, 吉田 正平, 中山 裕敏, 森竹 哲也, 荻野 雅弘
東京警察病院産婦人科
経口避妊薬が原因とされる合併症のひとつに,静脈血栓症がある.黄色人種は欧米人に比べ発生頻度は低いとされており,そのリスクに対する認識は低いのが現状である.今回我々は,インターネットで低用量ピルを個人輸入して使用し,服用中肺梗塞を来たした症例を経験したので報告する. 症例は36歳喫煙なし,平成12年3月より当院で低用量ピル(アンジュ28)を7ヶ月間処方内服した.この間血液検査に異常はなかった.国内で購入するより低価格のため,個人にて平成13年初めより低用量ピル(マーベロン)を輸入し服用を開始し,この後受診せず.平成14年4月新規シートを服用開始し,約2週目より下痢,嘔気,下肢浮腫,食思不振の後下肢こむらかえり,鼠径部痛などを生じたため服用中止したところ上記症状は軽快した.そのため再度服用を開始したが,約2週間後に前回の症状に加え咳,息切れも出現したため,5月23日当科を受診した.上記症状より肺梗塞を疑い入院とした.肺血流シンチグラムを行い,右肺に軽い梗塞巣を認め,安静にて症状は軽快し1週間後退院した.以後服用中止外来通院中であるが,現在のところ前記症状は再燃していない. 今日インターネットが簡便に利用できる社会となったため,これを利用して安価に医薬品が医療の目の届かない状況で購入可能となっている.日本人は欧米人に比較し低用量ピルによる血栓症は少ないとされる.しかし本症例は,本人に副作用の知識があり不幸な転帰をたどらなかったが,血栓症だけでなく肺梗塞なども生じることを服用者に十分に認識し服用する必要があると考えられた.低用量ピルの合併症につき,医学的考察を含め報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
197-197, 2003
|