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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
血栓塞栓症 産婦人科領域における手術後の血栓症リスクと予防的ヘパリン療法
松本 直樹1), 福田 貴則1), 鈴木 啓太郎1), 田部 宏1), 森 裕紀子1), 西井 寛1), 渡辺 明彦1), 落合 和彦1), 田中 忠夫2)
東京慈恵会医科大学附属青戸病院産婦人科1), 東京慈恵会医科大学付属病院産婦人科2)
【目的】近年,本邦においても婦人科手術後の深部静脈血栓症,肺塞栓症の発症が増加しており,それらを予防するため術後ヘパリンを使用する施設も増加している.今回我々は,投与する症例の選別法と安全かつ実用的な予防的ヘパリン投与法について検討した.【方法】2002年3月から6月までの4ヶ月間に当科にて行われた手術157例のうち,小手術などを除く117例を対象とし調査を行った.考案した術後血栓症リスクスコアを用いてハイリスク群を選別したのち,術後血栓症の予防の目的のため,インフォームドコンセントを得た16例に術後ヘパリン(1日1万−1.5万単位×3日間)を持続点滴にて使用した.使用群,非使用群においての術後血液検査所見(Hb値,血小板値,APTT値,TAT値,D-Dimer(DD)値)の変化につき検討した.検定法としてMann-WhitneyのU検定,Kruskal-Wallisの検定を用い,また多変量解析も併用した.【成績】経時的変化率においてTAT値ではヘパリン使用群で有意に上昇が抑制され(p=0.0133),ヘパリン療法の予防的効果の可能性を示唆した.それ以外においては有意な変化は見られなかったので,明かな検査上の副作用は指摘できなかった.また前述のリスクスコアや疾患などと,術前のTAT値,DD値の関連については,高リスクスコア群(TAT:p=0.0488,DD:p=0.0196),中等量以上の腹水伴う卵巣癌および卵巣腫瘍群(DD:p=0.0244),妊娠群(TAT:p=0.0014,DD:p=0.0005)で有意に高値となっていた.【結論】血栓症リスクスコアを用いてハイリスク群を選別することで,安全かつ実用的に予防的ヘパリン投与を行える可能性があるものと考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
198-198, 2003
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