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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【一般演題】
性器の異常
睾丸性女性化症完全型に色覚異常を合併した2症例


飯田 哲士, 和泉 俊一郎, 松林 秀彦, 鈴木 隆弘, 吉武 朋子, 菊池 公孝, 貴家 剛, 牧野 恒久
東海大学産婦人科


 患者は原発性無月経を主訴に21歳で産婦人科を受診.生後4ヶ月で両側鼠径ヘルニア手術の既往があり,また色覚異常を認めた.腟および外陰は女性型だが腟は盲端で,恥毛は少ない.画像検査で子宮を認めず,染色体検査で46XY,テストステロンは242ng/dlであり,睾丸性女性化症完全型と判断した.腹腔内精査および精巣摘出のために腹腔鏡を行った.腹腔内に子宮および卵管は存在せず索状となっていた.精巣は体外法により両側とも摘出し,病理組織検査で確認した.6歳離れた妹も同様に原発性無月経,両側鼠径ヘルニア手術の既往,色覚異常があり,姉同様に睾丸性女性化症完全型であった.この姉妹(兄弟)の同胞には正常な男性がおり,色覚異常を認めていない.睾丸性女性化症を代表とするアンドロゲン不応症は,アンドロゲン・レセプター(AR)の異常である.ARに関する遺伝子はX染色体に存在し,本疾患はX染色体依存性の劣性遺伝である.色覚異常の遺伝子も同様にX染色体に存在する劣性遺伝であり,母親は無症状であることから,この家系にはAR異常と色覚異常の遺伝子を同じX染色体にもつキャリアーの女性が存在し,代々遺伝してきたものと考えられる.患者であるこの姉妹(兄弟)の代で,結果的にこの遺伝は淘汰される.本疾患は通常原発性無月経として10代後半で発見されることから,それまでの人生は全く普通の女性として生活している.本当は男性であることを患者に説明した場合に,患者は錯乱するため,これを告げることはできない.実際母親は患者への説明を拒んだ.本症例の発表や遺伝子検索について2人の患者と母親の同意を得ているが,従姉妹(従兄弟)を調査することは難しい.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 199-199, 2003


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