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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
妊娠・分娩(1) 妊娠中に脳梗塞を発症した一症例
根岸 秀明, 濱田 佳伸, 佐々木 奈奈, 大島 乃里子, 星本 和種, 安藤 昌盛, 友部 勝実, 矢追 正幸, 堀中 俊孝, 榎本 英夫, 林 雅敏, 大藏 健義
獨協医科大学越谷病院産婦人科
【緒言】妊娠中に脳梗塞を発症することは稀であるが,発症後の診断,治療及びリハビリテーションに苦慮することが多く,妊娠後期の母体死亡率は10-30%との報告もある.また患者本人や家族の精神的負担も大きい.今回,我々は妊娠8週にて静脈性脳梗塞を発症したが経膣分娩にて生児を得た一症例を経験したので報告する.【症例】27歳.1経妊1経産.近医にて妊娠管理を受けていたが,妊娠7週2日時,下腹痛にて当院当科に搬送された.急性虫垂炎の診断にて虫垂切除術を施行した.術後4日目に左半身のしびれ,知覚鈍麻,筋力低下を発症し,頭部MRI,CT検査にて脳梗塞の所見が認められた.検査所見はPT 96%,APTT 36.9(34.6),fibrinogen 536,d-dimer 4.92,AT3 108,α2PI 125,protein C 74,protein S 109であった.発症以降,脳梗塞の悪化や脳出血は認めなかったが頭部MRI,CT検査では脳動静脈奇形の有無が確定しないため,周産期管理が問題となった.リハビリテーションを開始し,妊娠21週時にインフォームド・コンセントを得た上で脳血管造影検査を実施し,脳動静脈奇形のないことを確認した.以降,脳梗塞の軽快傾向を認め,外来管理とした.妊娠36週に再入院し,充分な補液とヘパリン投与を行って経過観察した.妊娠40週2日にて陣痛発来し,硬膜外麻酔下にて2918gの女児を経膣分娩した.神経症状の悪化は認めず,分娩後26日に退院となった.【結語】本症例は,脳動静脈奇形の無いことを確認し,経膣分娩の方針として生児を得たが,妊娠36週からの管理入院等の厳重な周産期管理が必要であった.文献的に考察を加えて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
207-207, 2003
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