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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
妊娠・分娩(2) 妊娠経過中に診断困難であった褐色細胞腫合併妊娠の一例
太田 邦明, 前村 俊満, 大路 斐子, 八辻 美智子, 土屋 雄彦, 豊泉 孝夫, 浅川 恭行, 渋井 幸裕, 片桐 由起子, 竹下 直樹, 田中 政信, 久保 春海
東邦大学産婦人科
褐色細胞腫(pheochromocytoma)は副腎髄質や傍神経節などに存在するクロム親和性組織から大量のカテコールアミン過剰分泌分泌により高血圧,頭痛などの交感神経刺激症状を呈する腫瘍である.妊娠との合併は非常に稀であり,症状が妊娠中毒症に類似するため診断が遅れることが多く,そのため母児の予後は不良である.今回経験した症例は31歳,2回経妊2回経産で妊娠・分娩歴に異常を認めなかった.妊娠31週頃より血圧160/100mmHgと上昇しヒドララジンの内服を施行したが症状の改善を認めず妊娠36週時に当科紹介受診し妊娠中毒症の診断で即日入院となった.入院後はヒドララジン内服,減塩食のもと安静にて血圧コントロールは良好であった.妊娠39週3日に自然破水し経腟分娩にて3,258g,アプガースコア8/9点の女児を娩出した.母児共に異常なく分娩後5日目に退院した.一ヵ月健診時の血圧は207/120mmHgと高値を示したため原因検索となった.腹部CTにて左副腎腫瘍を認め,尿中アドレナリン,ノルアドレナリン異常高値,副腎静脈血中アドレナリン異常高値,131I-MIBGシンチグラフィーにて腫瘍部位に集積を認めたことから褐色細胞腫と診断した.左副腎腫瘍摘出後は現在に至るまで経過良好である.褐色細胞腫合併妊娠の報告は本邦では40例あまりで母児共に死亡率も高い.しかし,今回は母児共に問題なく退院し一か月健診にて異常を認め診断された.妊娠中に高血圧を呈する場合は,本疾患も疑い当該検査を行う必要があると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
210-210, 2003
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