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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
妊娠・分娩(4) 癒着胎盤による産褥出血に対し超選択的子宮動脈塞栓術を行った1症例
長谷川 ゆり, 高野 政志, 斉藤 恵子, 藤井 和之, 田中 壮一郎, 松田 秀雄, 喜多 恒和, 古谷 健一, 菊池 義公
防衛医科大学校産婦人科
癒着胎盤は帝王切開後,子宮内掻爬術後に多いと言われ,出血のコントロールがつかず子宮全摘術が必要となることが多い.病理学的に診断される癒着胎盤は分娩2000件に1件程度と非常に稀である.今回我々は癒着胎盤による産褥出血に対し子宮動脈塞栓術(UAE)を行い良好な経過を得られた症例を経験したので報告する.症例は,26歳,0経妊0経産,妊娠経過に特に異常は認められず妊娠39週0日3066g男児を近隣の総合病院で正常分娩した.分娩後2時間胎盤が娩出されず出血量2373gとなり癒着胎盤の診断で当院に搬送された.来院後総出血量3900gに対し,濃厚赤血球13単位,新鮮凍結血症6単位を輸血した.用手的に胎盤娩出を試みるも約30%のみ娩出された段階で子宮底部が内反した状態となり,臨床的に癒着胎盤と診断した.その後も断続的に出血が認められた為UAEを行った.右内腸骨動脈及び左子宮動脈をゼルフォームにて塞栓し,止血に成功した.また副作用も特に認めなかった.癒着胎盤に対する薬物療法も考慮したが患者の希望もあり産褥14日目に退院し,その後は外来にてフォローアップとなった.退院時の血中HCGは251.5mIU/mlであったが産褥29日目には2.3mIU/mlとなり30日目に自然に胎盤が娩出された.子宮内には超音波,MRIで胎盤遺残の所見は認められず,また血流ドップラーにより子宮への血流の再灌流も確認された.癒着胎盤の出血に対する対処および胎盤遺残の治療として手術療法のみでなく子宮動脈塞栓術は有効な方法であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
214-214, 2003
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