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第105回学術集会(平成15年6月8日)

【一般演題】
妊娠・分娩(6)
尋常性天疱瘡合併妊娠の一例


武者 由佳, 伊藤 茂, 宮川 美帆, 木田 達平, 小林 優子, 安堂 裕介, 田口 雄史, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大学浦安病院産婦人科


 尋常性天疱瘡はIgG抗表皮細胞間抗体によって惹起される,自己免疫性水疱症である.妊娠合併症例の報告はまれであるが,妊娠例では母体症状の悪化,流・死産の転帰となるものも多い.今回我々は,尋常性天疱瘡治療中に妊娠し,ステロイド療法にて生児を得た一例を経験したので報告する.症例は24歳,0経妊0経産.平成12年に尋常性天疱瘡の診断でステロイド治療を開始されたが症状は悪化し,免疫抑制剤投与,血漿交換療法を施行し軽快.その後,ステロイド投与継続中に妊娠成立.妊娠12週に自己抗体価が上昇し,皮膚症状の悪化を認めたためステロイド増量が行われた.ステロイド増量後,皮膚症状はやや軽快した.その後妊娠経過は順調であったが,妊娠32週3日,前期破水・切迫早産にて入院.子宮収縮抑制を行ったが子宮収縮は増強し,妊娠33週3日,緊急帝王切開術を施行した.児は1676gの男児でAp9,全身の皮膚にびらんは認めず,臍帯血中の自己抗体も僅かであった.帝王切開後,母体の創部治癒には異常なく,皮膚症状も悪化を認めず,ステロイドの増量も要しなかった.一般に尋常性天疱瘡では血中自己抗体価と皮膚症状は一致するとされているが,胎児・新生児への移行抗体の影響については明らかとされていない.今後,尋常性天疱瘡の移行抗体と新生児予後との関係について検討していくことは,本疾患の病因と病態を明らかにする上で重要と思われた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2) 219-219, 2003


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