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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【一般演題】
胎児・新生児(2) 仙尾部奇形腫の出生前管理:2D・3D超音波を併用して(症例報告)
石根 祐子, 桑田 知之, 渡辺 尚, 鈴木 寛正, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
仙尾部奇形腫(Sacrococcygeal teratoma:SCT)は腫瘍性病変であり,詳細な経過観察と適切な分娩時期の決定が予後因子として重要である.今回我々は,2Dに加え3D超音波をも用いて,SCTを出生前診断・管理した症例を経験した.【症例】23歳,1経産.近医にて羊水過多を疑われ,妊娠27週当科紹介,28週精査入院した.2D超音波上,仙尾部に体外に突出する径14cmの内部不均一な腫瘍を認めた.腫瘍の骨盤内発育は認められなかった.羊水過多,巨大膀胱を認めたが,腎形態は正常であった.皮下浮腫を認めず,心機能は良好であった.以後2D及び3D超音波で腫瘍形態と全身所見をモニターした.次第に腫瘍は増大し,骨盤内発育も認めた.両側水腎症を認め,心エコーではMR,TRが出現,軽度皮下浮腫を認めた.以上,腫瘍増大と胎児水腫・心不全徴候出現のため,妊娠継続は不可と判断,妊娠30週5日帝王切開を行った(2784g,女児).児は出生後に腫瘍摘出手術が行われた.現在,片側下肢の軽度麻痺を認める以外は異常なく,外来管理となっている.仙尾部奇形腫は,腫瘍の増大とそれに伴う循環血液量の増加のため,心不全や胎児水腫を引き起こし,予後不良となりうる疾患である.適切な分娩時期の決定が,重要な予後決定因子となり得る.3D超音波は,腫瘍の骨盤腔内への発育が観察でき,非侵襲的なため本疾患のフォローには極めて有用である.今回,2D超音波により腫瘍の増大と心機能評価を行い,3D超音波により骨盤腔への発育や腫瘍の形態を評価することで,総合的なSCT胎児管理が可能となった.SCTの出生前管理には2D・3D超音波断層法の併用が非常に有用である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
232-232, 2003
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