|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第105回学術集会(平成15年6月8日)
【ランチョンセミナー2(5階・スバル)】
2.ART進歩の現状と未来予測
関 守利
セキール レディース クリニック
大学病院と不妊専門クリニックの両者を経験した演者が,その両者の長所,短所を比較して今後10年間の生殖医療実施施設のあるべき姿を外国の状況との対比により考察してみる. 当院では東洋医学専門医のもとで,漢方療法を積極的に取り入れており,患者の不定愁訴の治療,基礎疾患の抑制および使用薬剤に対する副作用の軽減に役立っている,また生育光線として細胞を活性化する遠赤外線を照射する温熱治療装置を排卵誘発剤の補助的役割とて併用したのであわせてその成果を紹介する. GnRHアゴニストの卵巣刺激周期が多くの施設で用いられているが,LH surgeを抑制することで採卵キャンセル率がほとんどなくなり,多くの良好成熟卵が採取できるようになった.しかし反面ではlong法におけるHMG投与量の増加と反応不良例の増加およびOHSSの増加などが問題となっている.その問題解決ためにGnRHアンタゴニストが開発され,ヨーロッパを中心にCOHに使用されている.従来のlong法と比較して採卵数,受精率,分割率,移植胚数に差は無く,妊娠率にも差は認めなかったという報告が多い.一方,総HMG投与の減少,治療期間の短縮,OHSSの発生率の低下を認めている.セキール レディース クリニックではGnRHアンタゴニスト(セトロタイド)を導入し臨床応用しているが,アンタゴニストは速効性で作用期間が短いという特性があるため,いわゆるテイラードCOH法が可能である.またHCGの代わりに,GnRHaを使用することで内因性のLHサージを起こして採卵することが可能となり,OHSS発生を予防できた多くの症例を認めた. 当院では自然周期IVF-ETを積極的に行っている.自然周期IVF-ETは高年齢やpoor responderに対する重要な選択肢のひとつである.リスクが低く,患者のコスト負担も少ない.しかしLHサージが起こりやすく,周期キャンセル例が時々認められる.そこで,主席卵胞が直径14mmになったところで,GnRHアンタゴニストの1日1回の皮下注射と卵胞FSH150IUを併用投与してエストラジオール値を維持させ,卵胞が18mmになったところでhCGを投与して採卵する新しい方法を導入した. 不妊治療を受けている当院受診患者80名にアンケート調査を行い,自分自身や自分を取り巻く人々に関する現状をどのように捉え,評価しているのかを明らかにする事が出来き,今後のARTの進歩を診療に応用する上での参考になると考えられた. それを踏まえて,着床前診断,移植による卵胞や卵母細胞の発育誘起,未熟な精子細胞の体外培養,再生医療や臓器移植,新薬の開発,副作用のチェック等のいろいろな利用法が考えられるES細胞の利用,遺伝子選別によるデザイナーベービー誕生の可能性などの将来的な問題とどのように取り組むかを検討した.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
239-239, 2003
|