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第105回学術集会(平成15年6月8日)
【ランチョンセミナー4(6階・606)】
4.胎児心エコー講座(簡単な胎児心スクリーニング法)
川滝 元良
神奈川県立こども医療センター周産期医療部 新生児未熟児科
1.心疾患の胎児診断の現状 心奇形は生産児100人に1人ともっとも頻度が高く,また,出生後早期からintensive careを必要とする重要な先天異常である.しかし,心奇形の胎児診断率は10%程度にとどまっている.著明な心拡大(エプスタイン病)や実質的な単心室(無脾症,左心低形成)など心室形態に異常を認める心奇形では胎児診断率が高いが,心室形態が正常で流出路が異常な心奇形(完全大血管転位症,ファロー四徴症,両大血管右室起始,大動脈離断症)はほとんど胎児診断されていない. 当院で胎児診断された心奇形症例の母体紹介週数は,3分の2が28週以後であった.近年の超音波機器の進歩で,超音波の画像は急速に改善している.妊婦健診で使用されている超音波機器を使用すると,妊娠18週で十分な胎児心スクリーニングが可能である.週数が進むと鮮明な画像を得るのが難しく胎児心臓の観察はむしろ困難となる.スクリーニング時期の遅れは胎児心スクリーニングを困難にする要因である. 2.四腔断面からのスクリーニング 重症心奇形の約50%は四腔断面のみでスクリーニング可能である.短時間で確実なスクリーニングのため四つのポイントを押さえる. 1)位置異常 胎児の左右を決定した後,心尖部と胃泡が左にあることを確認する.もし,左にない場合は複雑心奇形(内臓錯位,内臓逆位,修正大血管転位症)が存在する確率が高い. 2)心拡大 生後1週間以内に入院する重症心奇形の40%は入院時のCTRは60%以上である.胎児心臓の大きさは非常に効率の良いスクリーニング法である.心拡大の評価法としては総心横径(TCD)とCTARがある.TCDが週数mmより大であればCTARを計測,40%以上の場合は精査に回す. 3)midline midlineを観察することにより単心房,単心室,心内膜床欠損,大きなVSDが簡単にスクリーニングできる. 4)心房,心室の左右差 midlineを中心として心房,心室の左右差の有無を観察することにより,三尖弁閉鎖,肺動脈狭窄/閉鎖,大動脈狭窄/閉鎖,大動脈縮窄症などがスクリーニング可能となる. 3.流出路からのスクリーニング 四腔断面に流出路を加えれば重症心奇形の75%以上がスクリーニング可能となる.3つのポイントを押さえる. 1)ほぼ同じ大きさの大血管を2本見つける 2)各心室から1本ずつ大血管が出ている 3)2本の大血管が空間的に交差している 最も効率の良く流出路を観察する断面として最近three vessel viewが注目されている.四腔断面からプローベを胎児の頭側に平行移動するだけで容易に流出路が観察できる.観察ポイントとしては肺動脈,大動脈,上大静脈が左前から右後ろに向かって一直線に並んでいること,大きさが肺動脈≫大動脈≫上大静脈の順番であることを確認する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(2)
241-241, 2003
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