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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【教育講演1】
産婦人科医のためのMRI


富樫 かおり
京都大学大学院医学研究科


 MRIは,形態のみならず信号の変化に基づき異常をとらえうる優れた画像診断法ではあるが,決して万能ではない.MRIの特性,各種疾患の診断におけるMRIの位置づけ,すなわち,MRIの果たしうる役割と限界について知った上で適切な疾患に適切に用いてのみ最大限の効果を得ることができる.産婦人科医にとって必須な知識を,撮像法,正常像のバリエーション,発生異常,部位別診断(筋層,内膜,頸部,付属器腫瘤),子宮腫瘍の進行期分類の順にまとめる.
 撮像法において大切なことは,最も有用な断面におけるT1強調画像とT2強調画像を撮像すること,および造影剤の用い方といえる.体癌にて筋層浸潤の評価を必要とする場合,および内膜症性嚢胞や皮様嚢腫疑い以外の腫瘤の鑑別には造影後のT1強調画像が必須である.
 体部・頸部は内膜・頚管上皮は高信号,junctional zone・頸部間質は明瞭な低信号,外層の筋層は比較的高信号という層構造を呈する.ただ,この層構造は,年齢,月経周期,ホルモン剤投与といった内因性,外因性の多彩な内分泌環境により大きく変化するため,臨床情報を考慮した上で診断を進める必要がある.また平滑筋よりなる子宮は他の臓器と異なり収縮能を有するため,これによる偽造が筋腫や腺筋症と酷似することも要注意である.
 発生異常の評価,特に双角子宮と子宮中隔の鑑別,あるいは膣形成不全に際して口側の情報を得るためにもMRIは欠かせない検査法といえる.留血腫の有無,左右の子宮を隔てる組織の組成,内膜の有無,頸部の形成の程度等,解剖のみでなく組織組成の類推が可能となる場合が多い.
 筋層内病変については,容易に組織を得る方法がないためMRIへの期待が大きい.子宮筋層内に低信号腫瘤を認めた場合,100パーセントではないが,通常は筋腫.腺筋症などの良性疾患が考えられる.一方,高信号腫瘤を認めた場合は,頻度としては良性である確率がはるかに高いが,肉腫を考慮した注意深い評価がのぞましい.一方,内膜や頸部の病変については組織採取が比較的容易であるため,良性悪性の鑑別はMRIに求められるべきではない.MRIによる内膜病変鑑別の正診率は8割程度にすぎない.頸部や内膜の病変におけるMRIの役割は進行期分類といって過言ではない.
 一方,骨盤腫瘤の評価において,MRIは日常臨床における貢献が大きい.これはMRIが,筋腫,皮様嚢腫,内膜症性嚢胞といった頻度の高い良性疾患を極めて高い特異度にて診断を可能とし,治療方針決定のよりどころとなり得る為である.
 講演の最後に,これら従来のMRI診断法に加え,超高速撮像法を用いた最先端MRIを供覧し,シネモードによる動態評価,子宮蠕動と呼ばれる内膜直下筋層のリズミカルな収縮の描出と診断への応用など,MRIの今後の展望について簡単にまとめる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 278-278, 2003


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