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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【シンポジウム 産婦人科の未病対策】
2.周産期領域のおける未病対策(予防対策)
平原 史樹
横浜市立大学
ヒトの健康維持には食生活上の諸要件をバランスよく保つことが大切である.多くの生活習慣病は,若年からの食生活上の改善により,その発症を未然に防ぐことが可能となっている.女性においては,とくに妊娠・出産というダイナミックな身体変化を迎える人にとって,胎児をも含めた未病対策が必要となる.若年女性にとって,ダイエットは大きな関心事であり,『バランスよく食事を』といっても,なかなかバランスのよい食事はとりにくく,また,忙しい女性には,朝食を抜いたり,規則正しい食事がとれない日々をすごさなくてはならないことも多い.多くの若年者におけるダイエット志向,それにともなう鉄の欠乏傾向,カルシウム摂取の不足などは,妊娠時の貧血傾向の増強をきたし,また,児へのカルシウム供給により本人自身のカルシウム不足,乳汁分泌への影響,ひいては骨量減少等が問題となってくる.また,2000年12月には,厚生労働省から,若い女性へのメッセージとして『妊娠を計画している女性』への葉酸摂取推奨のキャンペーンが始まった.葉酸は緑黄色野菜に多く含まれている水溶性ビタミンの一種で,葉酸の不足はヒトにとって動脈硬化や血栓症という命にかかわる病気を起こすもとになりうることもわかってきた.一方,妊娠と葉酸の関係は,ある種の先天異常(神経管閉鎖障害等)の発生リスクを減らす可能性が示されており,したがって,葉酸は妊娠のごく初期から十分摂取されていることが重要とされている.平成13年度厚生労働省国民栄養調査によると,20―30代の女性は,上記の鉄,カルシウム,葉酸,いずれをとっても全年齢層の中でもっとも摂取量が少ないことが示されている. 本シンポジウムでは,現代女性の食習慣の実態を論じるとともに,妊娠時にさまざまな未病効果の認められた諸栄養素の摂取についてその重要性を指摘することとする.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
283-283, 2003
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