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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(1) 28歳,妊娠14週の初産婦に合併した成熟嚢胞性奇形腫に扁平上皮癌への悪性転化を認めた一例
大石 晃良, 田村 直顕, 稲垣 誠, 鈴木 康之
清水厚生病院産婦人科
成熟嚢胞性奇形腫は稀に悪性転化を起こすことが知られているが,その報告例のほとんどは50歳以上の高齢者であり,20歳代の若年者での報告は極めて少なく,しかも妊娠に合併した報告はない.今回我々は若年妊婦に合併した成熟嚢胞性奇形腫に扁平上皮癌への悪性転化を認めた一例を経験したので,多少の文献的考察を加えて報告する.【症例】28歳,1経妊0経産で,最終月経:平成15年2月27日より7日間,分娩予定日;平成15年12月4日として妊娠成立.近医にて妊娠確認,同時に卵巣嚢腫を指摘される.妊娠12週に卵巣嚢腫手術目的にて当科紹介受診となった.超音波検査にて右皮様嚢腫(137×85×129mm)と診断し,14週1日,約4cmの小切開にて嚢腫摘出術施行.右卵巣と大網の間に軽度癒着を認め,検体は628g,嚢腫内容は毛髪・皮膚成分および脂肪約570mlであった.術後病理診断はSquamous cell carcinoma arising in mature cystic teratoma.術後3日目の腫瘍マーカーはSCC:4.0U/ml,SLX:73U/ml,CEA:6.1U/ml.十分なインフォームド・コンセントの後,15週1日,再手術にて右付属器切除,大網部分切除術施行.対側卵巣は肉眼的に正常であり,少量の腹水を認めたが,細胞診はclass I.リンパ節腫大を認めず.術後病理診断では右付属器および大網に残存・浸潤性SCCの像は認められなかった.術後17日目の腫瘍マーカーはSCC:1.6,SLX:49,CEA:1.7とほぼ正常化した.現在,妊娠経過は順調である.【考察】直径10cm以上の卵巣嚢腫は,たとえ皮様嚢腫と診断しても,術前腫瘍マーカー等を検査し,慎重に治療方針を考慮しなければならない.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
300-300, 2003
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