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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(3) 著明な炎症症状により発症した卵巣チョコレート嚢胞の一症例
山本 晃人, 阿部 崇, 石川 温子, 土居 大祐, 米山 剛一, 明楽 重夫, 竹下 俊行
日本医科大学産婦人科
子宮内膜症は月経困難を主訴とすることが多いが,今回我々は月経困難を伴わず発熱を主訴とし,卵巣チョコレート嚢胞の感染を疑った症例を経験したので報告する.症例は,30歳,未婚,未経妊.平成15年5月12日より39度の発熱があり,近医を受診.卵巣腫瘍を指摘され,5月24日当科紹介入院となった.経腟超音波,骨盤CTにて両側の卵巣チョコレート嚢胞と思われる腫瘍を認めた.血液生化学検査にて,WBC 12300/μl,CRP 24.33mg/dlと強度の炎症所見を認め,チョコレート嚢胞の感染,子宮付属器炎,または腎盂腎炎を考え抗生剤投与を行うも軽快しなかった.一方,Hbが入院時9.5g/dlから4日目に7.9g/dlまで低下しており,腫瘍内出血及び卵巣悪性腫瘍も否定できず,入院6日目開腹手術を施行した.左卵巣が新生児頭大,右卵巣が鵞卵大に腫大しており,双方とも子宮後壁と強固に癒着していた.右卵巣嚢胞は単房性,左卵巣嚢胞は多房性であったが,明らかな充実性部分は無く,迅速病理診断でチョコレート嚢胞の結果を得たため,嚢腫核出術及び癒着剥離術を施行した.術後速やかに解熱し,経過良好にて11日目にて退院した.病理組織検査では,両側共に子宮内膜症性嚢胞であった.また,嚢胞内容物の細菌培養は陰性であった.卵巣チョコレート嚢胞は著明な炎症症状で発症することもあるとされており,今回若干の文献的考察を加え,その取り扱いにつき考察する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
305-305, 2003
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