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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(5) デキストラン製剤および抗癌剤腹腔内投与が著効した腹膜偽粘液腫の1例
落合 大吾, 櫻井 友義, 佐藤 健二, 加藤 直子, 岩橋 和裕, 郡山 智, 白石 悟
太田原赤十字病院産婦人科
【緒言】腹膜偽粘液腫は確立した治療法が存在しないため,その対応に苦慮する.今回我々は,術中,粘液物質の除去に加え,デキストラン製剤とCisplatin(CDDP)を投与の上リザーバー留置し閉腹し,術後,デキストラン製剤及びCDDPを腹腔内投与しQOL改善した症例を経験したので報告する.【症例】54歳女性.5年前,他院にて腹式単純子宮全摘術,両側付属器切除術,骨盤リンパ節廓清術を施行.Mucinous tumor ofborderline malignancyと診断された.術後化学療法3クール施行後再発を認めなかった.転居に伴い当院受診.外来経過観察中,腹部骨盤部CT検査にて横隔膜下の腹膜播種病変,腹膜偽粘液腫を認め,CA602も上昇,経膣超音波検査上もダグラス窩に多量の粘液貯留像を認めた.このため,ダグラス窩穿刺施行したところ大量のゼリー状物質が得られ,腹膜偽粘液腫が強く疑われた.試験開腹術施行し,ゼリー状物質を除去し閉腹時にデキストラン製剤及びCDDPを腹腔内投与し,リザーバーを留置した.術後,デキストラン製剤及びCDDPをリザーバーより腹腔内投与し,48時間後にクランプしていたドレーンを開放した.排液は茶褐色で腹膜偽粘液腫の溶解物として矛盾しなかった.現在経過観察中であるが臨床症状は改善した.【考察】腹膜偽粘液腫に対しデキストラン製剤及び抗癌剤投与しQOL改善した症例を経験した.本疾患は確立した治療法は無く治療に難渋するが,積極的に開腹し粘液物質を除去した後,デキストラン製剤及びCDDP等の抗癌剤を腹腔内投与することも有効であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
310-310, 2003
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