|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
卵巣腫瘍(5) 腹腔内留置リザーバーカテーテルが直腸穿孔した一例
石井 美希子, 齊藤 俊雄, 大淵 紫, 佐川 泰一, 林 敏, 鈴木 康伸, 清川 尚
船橋市立医療センター産婦人科
腹腔内化学療法は,卵巣癌など腹膜播種を生じる悪性腫瘍に対する治療法として,全身投与法と共に投与法の一つとなっている.腹腔内投与専用の皮下埋め込みカテーテルを留置するが長期間の留置によりカテーテルの閉鎖や癒着等の合併症も稀に報告されている.今回我々は腹腔内に留置したリザーバーカテーテルが直腸を穿孔した非常に稀な症例を経験したので報告する. 症例は70歳.既往歴,糖尿病・高血圧・横行結腸癌(平成11年).平成12年7月卵巣癌(IIIc期,類内膜癌)にて卵巣悪性腫瘍手術を施行し,腹腔内リザーバーを留置した.術後,腹腔内化学療法を4コース施行し(3コース目よりリザーバー閉鎖し使用不能)再発所見はなく経過良好であった.平成14年4月頃よりリザーバー留置部の圧痛を認め,10月頃より腹壁より膿流出が認められるようになった.抗生剤・消炎剤にて一時消退するものの持続的膿流出の反復を認めた.CT上,リザーバー留置部の膿瘍形成を疑い,平成15年3月リザーバー除去術を施行した.開腹所見にて癌の再発は無かったが,カテーテルは小腸に取り巻く様に被覆されており,先端は直腸に穿孔していた.腹腔内に腸管の内溶液は認められなかった.皮下のリザーバー留置部には膿瘍形成が認められた.癒着の激しい小腸の部分切除,穿孔部縫合,リザーバー抜去,ドレナージ術を施行した.術後,順調に回復し現在外来経過観察中である. 本症例は腹腔内リザーバーの直腸穿孔部よりカテーテルに沿って逆行性に感染し,腹壁周囲に炎症を起こしたと考えられた.今後,リザーバー留置にあたり重篤な合併症として消化管穿孔も念頭におき経過観察していくことが重要であると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
312-312, 2003
|