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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
外陰・膣腫瘍 外陰に発生したMammary-like gland carcinomaの1例
朝倉 禎史, 川瀬 里衣子, 小木 三郎, 市川 雅男, 五十嵐 健治, 若月 雅美, 鴨井 青龍, 河村 堯, 竹下 俊行
日本医科大学付属千葉北総病院産婦人科
外陰部には胎生期のmilk lineにそった異所性乳腺の残基が存在し,非常に稀有な「乳癌」の発生が知られている.一方,van der Putteらは,外陰部に,アポクリン腺,エックリン腺,乳腺の形態を共有する「外陰部乳腺様腺」の存在を報告している.今回,外陰部にアポクリン腺癌,エックリン腺癌,乳癌の性格を合わせもつ癌を経験し,病理学的検索の結果,van der Putteらの提唱する「Mammary-like gland carcinoma」と診断した.【症例】75歳の女性.主訴は外陰部からの出血.病巣は陰核の右側より発生した外陰部腫瘍であった.大きさは小指頭大で,表面は易出血性,境界は不明瞭で,浸潤性であった.生検では,アポクリン腺癌が疑われた.腫瘍マーカー(CA19-9,CA125,SCC,CEA)に異常を認めなかった.内性器は萎縮様で異常なく,周囲のリンパ節も触知できなかった.MRIやCT等による全身の検索でも,乳癌を始めとする他の部位の悪性腫瘍の存在は認めなかった.そこで,FIGOI期外陰癌と診断し,単純外陰部切除術にて病巣を完全摘出した.病巣のHE染色像は,比較的豊富な好酸性胞体と核小体の目立つ大型胞状核を有する腫瘍細胞が,腺管状,束状,胞巣状配列を示しながら髄様かつ浸潤性に発育し,周辺では高度の脈菅侵襲を示していた.一部の腺管上皮では,断頭分泌が認められた.特染では,内腔を中心に消化PAS染色にて陽性を示す粘液を認めた.免疫染色では,GCDFP-15:陽性,CEA:陰性,ER:陰性,PR:陰性,HER-2:陰性であった.電顕像では,断頭分泌のほか,エックリン顆粒を認めた.以上より,外陰部のMammary-like gland carcinomaと診断した.現在,外来にて経過観察中である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
314-314, 2003
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