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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
骨盤腫瘍(1)
茎捻転による急性腹症で発症し,有茎性腹膜中皮腫が示唆された1症例


高橋 宏典1), 工藤 一弥1), 吉田 昌史1), 水本 賀文1), 酒井 優2), 提坂 敏昭1)
自衛隊中央病院産婦人科1), 自衛隊中央病院病理2)


 【緒言】今回,我々は子宮広間膜に茎を有する腫瘍の茎捻転に起因する急性腹症にて緊急手術をおこなった症例を経験したので報告する.【症例】66歳,3回経産婦.平成15年6月2日,腹部の激痛のため,当院に受診した.理学所見としてdefenseが強く認められた.画像上は20cm大の充実性腫瘍が子宮底部に隣接するように存在した.血液所見はWBC 21700/μl,LDH 1204IU/l,CRP 28.3mg/dlと高値を呈した.卵巣腫瘍の破裂や虫垂炎などを疑い,同日,緊急開腹術をおこなった.腹腔内は全体にedematousであった.卵巣固有索周囲の広間膜に茎を有する20cm大の表面平滑,暗赤色調の腫瘍が認められ,茎部を切断し,腫瘍を摘出した.腫瘍の割面は暗赤色,充実性であった.組織学的には大部分が出血壊死を示しており,茎捻転に起因する梗塞/壊死と考えられた.また,残存する組織にはpattern-less-patternがうかがえる紡錘形細胞の増殖がみられ,solitary fibrous tumorが疑われたが,免疫組織学的にCD34が陰性で,サイトケラチン,カルレチニンおよびビメンチンがいずれも陽性であることから中皮腫が示唆された.【結論】婦人科領域においても卵巣以外の腫瘍により茎捻転が生じ,急性腹症にいたる症例がまれながら存在する.また,本症例においては術前に腹膜炎との鑑別が困難な高度な炎症反応および理学的所見を呈していた.これら術前診断における鑑別の点からも文献的考察を加え報告する.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 319-319, 2003


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