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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
骨盤腫瘍(2) 月経周期依存性の腹水貯留を認めた漿膜下子宮筋腫の一症例
田中 雄大, 小田 英之, 浅田 弘法, 橋場 剛士, 岩田 壮吉, 丸山 哲夫, 久慈 直昭, 末岡 浩, 吉村 泰典, 野澤 志朗
慶應義塾大学産婦人科
症例は36歳,0経妊0経産.2002年1月ごろより月経周期依存性の腹部膨満感を自覚し,近医を受診,子宮筋腫と月経周期依存性の腹水貯留を指摘された.腹水は卵胞期から著明に増加し,月経直前に減少することを繰り返していた.2003年2月に当院受診し,原因不明の腹水と骨盤内腫瘤を認めた.内診および超音波検査にて有茎性子宮筋腫と思われる腫瘤を認め,また,両側卵巣は正常大であった.MRI検査では,径6cm大の子宮筋腫と腹水の診断であった.悪性疾患を念頭に精査を進めた.上部消化管,下部消化管,肝機能検査,腎機能検査,心機能検査において異常所見は認められなかった.腹水穿刺により採取された腹水は漏出性であり,腹水細胞診はclassIであった.以上の所見によりpseudo-Meig's syndromeと同様の機序による腹水貯留が強く疑われたが,serous surface papillary carcinoma(SSPC)などの悪性疾患の腹膜転移も完全に否定し得なかった.確定診断のため腹腔鏡下手術を施行した.手術所見は漿膜下筋腫の他,小さな筋腫核が多発していたが,両側卵巣,卵管,および上腹部には悪性腫瘍を疑わせる所見は認められなかった.また,MRIで認められた漿膜下筋腫の子宮体部との付着部に,怒張した静脈が観察された.腹水は漏出性であり,術中腹水細胞診もClass Iであった.SSPCその他の悪性疾患を示唆する所見が認められなかったため,腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行した.現在術後経過を観察しているところである.本症例も含めて周期性腹水貯留を認める子宮筋腫症例に対しては,稀な疾患であるpseudo-Meig's syndromeと共通の病態生理が存在する可能性を考慮に入れた対応が必要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
320-320, 2003
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