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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
感染症
難治性の重症骨盤腹膜炎,卵管留膿腫の1例


笹 秀典1), 伊香 加納子2), 吉永 洋輔2), 長谷川 ゆり2), 古谷 健一2), 高野 政志2), 喜多 恒和2), 戸出 健彦2), 菊池 義公2)
防衛医科大学校病院分娩部1), 防衛医科大学校産婦人科2)


 子宮内膜症を基礎疾患として重症骨盤腹膜炎を発症し,緊急開腹ドレナージ術後,再発して再手術を要した難治性の卵管留膿腫の症例を経験したので報告する.症例は38才,未経妊未経産,3年前に不妊治療歴あり.39℃台の熱発と左背部痛にて近医受診,尿路感染症疑われ,抗生剤処方されるも軽快せず,当科を紹介受診.意識は清明,体温39℃,下腹部全体に自発痛あり.内診にて子宮,付属器が一塊となって触知し,可動性不良,圧痛を伴った.WBC 17700/mm 3,好中球91.1%,Hb 8.0g/dl,CRP 29.4mg/dl.超音波,CTにて両側の子宮内膜症性嚢胞,両側卵管留膿腫が疑われた.抗生剤点滴にて症状軽快せず,2日後,緊急開腹手術施行した.術中所見は,子宮,付属器は一塊,直腸とも癒着,両側卵管は著明に腫大,周囲と強固に癒着し剥離は困難,両側卵巣は観察不可能であった.腫大した両側の卵管を部分切開し排膿したが,摘出は困難であったため,両側卵管切開部にドレーンを挿入し,閉腹した.術後,軽度DIC徴候示すも諸療法にて軽快傾向,21病日,退院.膿瘍からはEscherichia coliのみが検出された.2ヶ月後,菌血症にて緊急入院,残存した左卵管留膿腫が認められた.再手術にて左付属器を摘出し,術後は順調に回復した.膿瘍からはEscherichia coliが検出され,子宮内膜症組織が合併していた.卵管留膿腫は20〜30歳代の女性に多くみられ,妊孕性温存のために極力,保存的に治療する必要がある.しかし保存的治療が無効の場合や,診断が確定できない場合,もしくは破裂が疑われる時には,本症例のように開腹手術を行う必要がある.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 323-323, 2003


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