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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
感染症 子宮体癌術後下肢リンパ浮腫に劇症型溶連菌感染を来した一例
曾根 献文, 石川 智子, 兵藤 博信, 山田 学, 八杉 利治, 久具 宏司, 上妻 志郎, 堤 治, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
劇症型溶連菌感染症は,溶血連鎖球菌の感染により,突然のショック症状と多臓器不全を起こした状態を指す.感染部位において急激に進行する壊死性筋膜炎や筋肉壊死が特徴である.死亡率は約42%で,感染症の死亡率としては極めて高い.今回我々は,子宮体癌術後9年目に,下肢のリンパ浮腫に溶連菌感染を来し死亡に至った症例を経験した.症例は74歳.9年前子宮体癌Ic期に対し,準広汎子宮全摘術,両側附属器切除術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術および全骨盤照射を行い,再発を認めていなかった.治療後下肢リンパ浮腫を認め,蜂巣織炎を繰り返していた.症状はまず嘔気・嘔吐および発熱,悪寒・戦慄から始まり,さらに下肢浮腫増強,呼吸苦が出現してきたため,約13時間後,救急車で来院した.意識は清明,両下肢の浮腫が著明で,右大腿内側に限局的に紅斑を認めた.末梢の冷感強く,低血圧,頻脈,無尿,低体温,白血球減少,CRP上昇などから,敗血症ショック・多臓器不全と考え,抗生剤投与,輸液,DOA酸素投与を開始した.下肢の紅斑は増大傾向で,全身状態も改善せず,劇症型溶連菌感染症を疑いICUで管理した.紅斑は下肢から臀部に広がり水疱を形成,色調も紫から黒色を呈した.顔面・躯幹には発赤を認めた.入院時の静脈血培養でG群溶連菌が検出され診断が確定した.集中治療を継続したが,多臓器不全から脱却できず,発症後8日で死亡した.現在までに,婦人科術後あるいは放射線治療後の患者での劇症型溶連菌感染症の発症は7例の報告があるが,「婦人科癌術後」がリスク因子となり得るかについては,今後,症例を蓄積し検討する必要があると考える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
325-325, 2003
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