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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
不妊・内分泌(2) 形態学的不良胚のみの胚移植がART成績に及ぼす影響について
鈴木 玲奈, 望月 修, 大西 雄一, 小菅 陽子, 井深 京子, 宇津 正二, 野田 恒夫
聖隷三方原病院産婦人科
[目的]これまで形態学的に良好な胚移植の成績は数多く報告されているが,不良胚のみの移植による成績はあまり報告されていない.そこで,最近2年間のART(体外受精および顕微授精)で,初期胚移植を行った314例のうち形態学的不良胚のみの胚移植がART成績に及ぼす影響について検討し,胚のviability能力の限界を推定することを目的とした.[方法]対象は最近2年間のARTで,初期胚移植を行った314例のうち形態学的不良胚のみの胚移植50周期,コントロールとして形態学的良好胚のみの胚移植264周期とした.なお,胚の形態学的評価はBolton分類で行い,グレード3,4を良好胚群,グレード1,2を不良胚群とし,この2群における採卵数,胚移植数,臨床妊娠率,着床率,流産率および多胎率の検討を行った.[成績]不良胚群と良好胚群の採卵数と移植胚数の平均は,5.7個 vs 6.6個,2.2個vs 2.2個で不良胚群に採卵数が少ない傾向を示したが,胚移植数は両群で同等であった.胚移植当たりの臨床妊娠率は,それぞれ10.0% vs 39.4%で有意に良好胚群の方が高かった.さらに,着床率も5.4% vs 21.8%でやはり臨床妊娠率と同様の結果を示した.一方,流産と多胎は不良胚群で認めず,良好胚群で流産率13%(14例),多胎率20%(21例)であった.[結論]今回の検討では,予想通り不良胚群のみの胚移植による妊娠率および着床率は共に極めて不良であった.しかし,ごく少数例ながら妊娠,出産に至る症例があり,かつその予測は困難なことから,例え不良胚群のみの胚移植でも積極的に実施することが肝要と思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
334-334, 2003
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