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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
不妊・内分泌(2) 子育ての一手段としての特別養子縁組―養子を迎えることを希望した159組の夫婦についての分析―
星野 寛美
NPO法人環の会
当会では,妊娠・出産・子育てに行き詰まった方に対して,相談に応じ,必要な場合は,特別養子縁組による子育ての方法も提示している.その概要については,これまでの当学会で報告してきたとおりである.今回は,育て親になることを希望する夫婦に焦点を絞り,平成10年から14年までの5年間に,育て親になることを希望し,当会の面接を受けた159組の夫婦について,主にその医学的背景を分析し,報告する. 育て親となることを希望し,当会の面接を受けた夫婦の平均年齢は,妻が35.4歳,夫が37.0歳であった.結婚期間は平均7.8年であった.医学的背景としては,不妊症が139組(87.4%)であった.その内89組は何らかの生殖補助医療を受け,最高50回のAIDを受けた夫婦もあった.不妊症の139組の夫婦の内,50組(36.0%)は,生殖補助医療による治療を受けることなく,育て親となることを希望し,当会の面接を受けている.これら50組の内訳では,男性因子による不妊が25組で,最も多かった. 不妊治療の最終目標は,妊娠・出産であるが,生物的な親でなくても,社会的に親になり,子育てができれば良いと考えている夫婦がこれほどの率で潜在的に存在していることを念頭に置きながら,医療スタッフは不妊治療にあたることが必要であると考えられた.特に,AIDによる治療では,子どものルーツを辿れないといった社会的あるいは心理的な問題を孕んでおり,AIDの治療方法を提示する際には,養子縁組という選択肢も同時に提示することが必要であると考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
335-335, 2003
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