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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
血液・凝固
妊娠中に発症した下肢静脈血栓症に対し,下大静脈フィルター留置後に経腟分娩した1例


小林 優子, 木田 達平, 宮川 美帆, 武者 由佳, 安堂 裕介, 田口 雄史, 池田 申之, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂浦安病院産婦人科


 妊娠中は凝固因子増加や線溶系低下などの血液変化,妊娠子宮における静脈の圧迫による静脈血流の停滞により,血栓を作りやすい状態にある.最近では周産期に,凝固因子であるフィブリノーゲンの増加や抗凝固因子であるプロテインSの低下なども指摘されている.今回我々は妊娠23週に下肢深部静脈血栓症を発症し,肺血栓塞栓予防に一時的下大静脈フィルターを留置し正常分娩をした症例を経験したので報告する.【症例】32歳,0経妊0経産.既往歴,家族歴に特記すべき事項はない.妊娠23週6日突然の左下肢の疼痛・腫脹を自覚し近医を受診したところ,下肢深部静脈血栓が疑われ当科へ紹介となった.入院時,超音波検査および下肢静脈造影で左大腿静脈に血栓を認めた.入院時の凝固・線溶系検査では,プロテインS活性31%と低下を認めた以外,プロテインC活性,AT3,LAC,抗CL抗体に異常はなかった.直ちに抗凝固療法としてダナパロイドナトリウムを1日2500単位で10日間使用し,症状が軽快したため低用量アスピリン内服にきりかえ外来管理とした.妊娠37週0日管理目的に入院とし,下肢静脈造影では左大腿静脈上流は造影されず,血栓の存在は否定できなかったため肺血栓塞栓予防に一時的下大静脈フィルター挿入し経腟分娩の方針とした.妊娠39週0日3128g,女児をAp9点で正常分娩となった.分娩後肺血栓塞栓徴候はなく,産褥の肺血流シンチグラフィーでも欠損像は認めなかった.妊娠中に下肢静脈血栓症を発症した例に,抗凝固療法および下肢静脈フィルターを留置することが有用であると思われた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 338-338, 2003


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