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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
産科救急
流産手術後に大量出血し,子宮摘出後に癒着胎盤と診断された1例


市川 美和, 坂巻 健, 岩澤 有希, 新田 律子, 越野 哲郎, 内田 律子, 甲賀 かをり, 井上 丈彦, 吉村 理, 長阪 恒樹
武蔵野赤十字病院産婦人科


 【緒言】癒着胎盤は,基底脱落膜が欠如し,胎盤が直接子宮筋層に付着しているもので,2000〜4000例に1例とされている.帝王切開率の上昇に伴い,その頻度も増加していると考えられるが,妊娠初期の癒着胎盤の報告は稀である.今回我々は,妊娠7週での流産手術時に大量出血し,術後子宮筋層に豊富な血管の増生を認めたため子宮摘出し,癒着胎盤と診断された症例を経験したので報告する.【症例】30歳,1経妊1経産.前回分娩は帝王切開.妊娠7週相当の稽留流産と診断されたが,子宮前壁より内腔に突出するポリープ様病変と脱落膜の不整な肥厚像も同時に認めた.絨毛性疾患,子宮腫瘍等の可能性を考え,MRIを施行するも,診断が確定できなかった.経腹超音波下に慎重に子宮内容除去術を施行したが,術中に1500gの大量出血がみられた.病理診断では,絨毛と脱落膜のみを認め,尿中hCGも順調に低下したが,子宮筋層は徐々に腫大していった.CT,MRI,骨盤内動脈造影を施行したが,動静脈奇形様の怒張,蛇行した血管を多数認めるのみで,筋層内に腫瘍性病変はみられなかった.診断が確定しないこと,保存的治療中に大量出血の可能性があることから,本人,家族と相談し,両側子宮動脈塞栓術を行った後,子宮を摘出した.病理診断は,子宮漿膜付近まで侵入した癒着胎盤(placenta increta)であった.【結語】癒着胎盤は,超音波断層法,カラードップラー法,あるいはMRIにより,妊娠中にある程度診断できるようになった.しかし,妊娠初期での癒着胎盤の診断は困難なため,帝王切開既往のある流産症例では,癒着胎盤の可能性を十分検討し,手術に臨むことが必要と考えられた.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 344-344, 2003


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