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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
妊娠・分娩(1) 多発性嚢胞腎による慢性腎不全にて血液透析を行いながら妊娠分娩に至った1例
平井 久也, 横山 普子, 村上 浩雄, 鈴木 一有, 篠原 弘光
藤枝市立総合病院産婦人科
慢性腎不全にて長期の血液透析を施行している女性において妊娠・分娩は産科,透析ともに厳重な管理を要するため,一般的に妊娠を許可しない場合が多いものの,計画外に妊娠し,強く挙児を望むケースについては,各科との密接な連携の下,慎重に管理を行うこととなる.今回我々は多発性嚢胞腎にて慢性腎不全となり,血液透析施行中に妊娠し分娩に至った症例を経験したので,報告する.【症例】26歳0経妊0経産婦.父親,妹が多発性嚢胞腎.25歳時より慢性腎不全となり血液透析導入,週3回の維持透析にて管理中であった.平成14年10月5日を最終月経に妊娠.夫婦の強い希望にて妊娠継続となった.妊娠中は食事制限をせず,透析時間を増やすことで対応した.妊娠20週4日より管理入院し,25週2日より連日透析を施行した.25週1日より塩酸リトドリン,硫酸マグネシウムによるtocolysisを開始.血中濃度の変動によると思われる身体諸症状出現したため,12時間おきに投与量を調節した.同時期より羊水過多を認め,妊娠25週時と29週時に羊水穿刺を施行した.妊娠29週0日子宮収縮抑制困難となり,腰硬麻下に帝王切開術を施行,1322gの男児を出生した.手術後は妊娠前の透析管理の状態まで戻すことができた.術後16日目に退院,現在も加療中である.【考察】透析施行中の妊娠では,厳重な透析管理,産科管理を行ってもなお,未熟児の出生のリスクは高くまた,母体および新生児の管理に多くの労力とコストの投入が見込まれる.社会保障により患者の費用負担はほとんどないが,母体と児の予後とともに医療経済の面からもbenefitを検討する必要があると思われた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
351-351, 2003
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