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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
妊娠・分娩(4)
妊娠中期に心不全兆候を呈した抗リン脂質抗体症候群による不育症患者の一例


平野 由紀, 柴原 浩章, 鈴木 寛正, 桑田 知之, 鈴木 達也, 高見 澤聡, 渡辺 尚, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科


 Antiphospholipid antibody syndrome(APS)は習慣流産や,後天的血栓性疾患の原因として重要な自己免疫疾患である.APSによる習慣流産患者が妊娠経過中に治療に抵抗し,肺高血圧(PS),僧帽弁閉鎖不全(MR)の増悪でうっ血性心不全を呈した症例を経験したので報告する.症例は37歳,3経妊0経産.いずれも妊娠初期(6〜8週)に自然流産.続発性無月経の治療でプロゲステロン製剤を内服し,深部静脈血栓症発症既往あり.3回目の流産を契機に前医でAPSの診断を受け,挙児を希望し平成13年6月,当科受診.初診時BMI;29.8,血圧;158/96mmHg.抗CLβ2GP1抗体≧125U/ml,抗カルジオリピンIgG,IgM抗体は各々3.0,6.7,ループスアンチコアグラント2.39,抗核抗体160倍とすべて陽性で,APTTも54.7秒と延長.プレドニンおよび低用量アスピリンによる治療でいずれの抗体価も有意な低下を認めず.血圧はα-メチルドーパ,ヒドララジンで管理.患者および家族の強い挙児希望と,内科学的に他の膠原病合併が無く妊娠許可状態と判断.平成14年5月に自然妊娠が成立したが,経過に伴い高血圧が治療困難となり,妊娠21週4日入院管理.心エコーでPSと中等度のMRを認め,ラベタロール,塩酸ニカルジピン静注による降圧療法,およびヘパリン投与を開始したが,心不全の増悪,呼吸状態をはじめ全身状態が急激に悪化,母体救命のため妊娠22週2日,帝王切開術を施行.母体の全身状態は術後著明に改善,術後9病日目に退院した.なお児は蘇生の効なく生後3日目に死亡した.
 APS合併妊娠ではその血栓素因からPS,心弁膜症合併のリスクがある.妊娠前の十分な合併症の説明,心拍出量が増加する妊娠中期以降の循環管理の重要性を痛感した.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 359-359, 2003


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