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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
妊娠・分娩(4) 肝右葉梗塞を発症した重症妊娠中毒症の1例
小野 晃子, 宮越 敬, 丸山 哲夫, 大野 暁子, 田中 守, 吉村 泰典, 野澤 志朗
慶應義塾大学産婦人科
持続的血液透析濾過法(continuous hemodiafiltration:CHDF)は循環動態への影響が小さく,サイトカインの除去に有用な血液透析濾過法の1つである.今回我々は,広範な肝右葉梗塞の発症後にCHDFを施行した重症妊娠中毒症の1例を経験したので報告する.症例は35歳,0経妊0経産.自然妊娠成立後,他院にて妊婦健診を受診していた.妊娠23週頃より蛋白尿,高血圧を認めたため妊娠26週2日に当院紹介受診となった.入院時の血圧は136/95mmHg,尿蛋白は2.1 g/日であり,血小板減少および肝逸脱酵素の上昇は認めなかった.妊娠26週4日午後より右季肋部痛と嘔気が生じ,夜間には血圧上昇(180/110mmHg)が認められた.その後妊娠26週5日未明より乏尿・血尿が出現し,肝逸脱酵素の上昇(LDH/AST/ALT:488/13/108IU/L),高血圧の増悪を示した.また,腹部CTにて肝右葉全域に低吸収域を認め急性妊娠脂肪肝の発症が疑われたため,同日緊急帝王切開術を施行した.分娩後も母体の肝逸脱酵素の上昇(LDH/AST/ALT:7900/2851/3317IU/L),乏尿・血尿の持続および全身浮腫を認めた.そこで肝・腎機能不全の増悪を考慮し産褥1日目より人工呼吸器管理およびCHDFを導入した.また,産褥5日目の造影CTでは肝右葉全域の壊死が確認された.CHDFにより除水が可能となり全身浮腫は軽減し,同時に肝機能の改善傾向が認められた.その後産褥10日目には人工呼吸器から,産褥13日目にはCHDFから離脱し,産褥39日目に退院となった.(考察)重症妊娠中毒症における右季肋部痛の原因として肝梗塞発症の可能性も考える必要があろう.また本症例では早期にCHDFを導入したことが母体の肝腎機能の改善に寄与したものと考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
360-360, 2003
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