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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
妊娠・分娩(5) ヘパリンロックした静脈留置カテーテルに起因する妊娠中の敗血症
橘 涼太, 芦田 敬, 加藤 清, 田畑 きく江, 岡 賢二, 金井 誠, 小西 郁生
信州大学産婦人科
カテーテル留置に起因すると思われる敗血症を2例を経験した.症例1は43歳の2回経産婦で,妊娠6週,重症妊娠悪阻のためヘパリンロックを併用し輸液治療していた.妊娠11週,通常どおり点滴を開始したところ,約1時間後にショック状態となり,その後発熱を認め敗血症性ショックを疑い治療した.カテーテルを抜去後徐々に解熱し軽快した.後日,血液培養,カテーテル培養よりSerratiaを検出した.症例2は23歳初産婦で,妊娠32週,IUGRのため他院にて連日マルトース・ヘパリン療法を施行され,ヘパリンロックにより管理されていた.カテーテル留置後5日目,点滴開始直後に発熱しショック状態となり,敗血症性ショックを疑われ母体搬送となった.敗血症に加えDICも合併したので,その治療を行い順調に回復した.後日,血液培養よりAcinetobacterを検出した.2症例の共通点は,妊娠中,長期間のカテーテル留置中の発熱であり,ヘパリンロックした静脈留置カテーテルより点滴を開始した直後に発症したこと,血液培養検査では弱毒菌であるグラム陰性桿菌が検出されたことである.妊娠中,長期間のカテーテル留置が必要な場合にはヘパリンロックの期間制限を含め厳重に管理する必要がある.また留置カテーテルにて管理されている患者で原因不明の発熱を認めた場合にはカテーテルを直ちに抜去する必要がある.とくに,妊娠中で重症妊娠悪阻などにより免疫能が低下している場合には日和見感染の可能性が高いことを念頭に置く必要がある.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
362-362, 2003
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