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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
妊娠・分娩(5) 強い腹膜刺激症状で骨盤内感染が示唆され,妊娠28週で帝王切開に至ったダグラス窩膿瘍の一例
小林 康祐, 大井 理恵, 関口 将軌, 仁平 光彦, 小林 織恵, 八重樫 優子, 宇田川 秀雄
国保旭中央病院産婦人科
子宮内感染には至っていない骨盤内感染の管理は一定せず,妊娠週数や感染の程度によって治療内容や予後も異なる.今回,妊娠28週で発熱し,強い腹膜刺激症状を有していながらも,羊水所見で子宮内感染を示唆する所見に乏しく,開腹してダグラス窩膿瘍を認めた症例を経験したので報告する.症例は妊娠28週1日切迫早産の診断で他院より母体搬送となった.塩酸リトドリンおよび硫酸マグネシウムの点滴静注を併用しても子宮収縮の抑制はできず,子宮体部に強い圧痛と腹膜刺激症状を認めた.体温は37.7℃で血液所見としてWBC 22,800/μl,CRP 21.2mg/dlと子宮内感染を疑い羊水穿刺を施行した.羊水は淡黄色透明で検鏡でも白血球や細菌を認めず.顆粒球エラスターゼは陰性で糖濃度は37mg/dLと子宮内感染の可能性は低いものの,腹膜炎を認めているため,妊娠継続不可能と判断し,緊急帝王切開を施行した.開腹時,子宮下部横切開にて児を解出した後,腹腔内を検索したところダグラス窩膿瘍を認め除去した.両付属器や腸管系に異常を認めず,術後抗生剤としてCTX2g/日およびMINO2g/日を投与し急速に回復した.膿瘍培養から大腸菌が検出されている.なお児は1244gアプガースコア7/8でNICU管理となった.今症例は妊娠28週という週数のためterminationの選択をしたが,外科的なダグラス窩膿瘍の除去のみで妊娠継続が可能だったのか,問題点が残る.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
363-363, 2003
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