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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
妊娠・分娩(6) 胎盤内巨大血腫(Breus' mole)の一例
菊池 信正, 久保 祐子, 戸松 邦也
館林厚生病院産婦人科
Breus' moleは胎盤胎児側の絨毛膜の直下に生じる巨大血腫であり稀な疾患である.本疾患は胎盤内に巨大な血腫が生じ,胎児胎盤の循環が損なわれ,子宮内胎児発育遅延(IUGR)や子宮内胎児死亡をきたす頻度が高く,児の予後が不良であることが多いとされている.今回我々は,IUGR及び妊娠中毒症を伴い出生前よりBreus' moleを疑い,生児を得ることができた症例を経験したので報告する.症例は38歳,0回経妊0回経産.初期より当院外来にて経過を見ていた.妊娠29週5日より血圧135/87,尿蛋白(±)胎児発育1247gと胎児発育遅延傾向が出現.32週5日血圧148/99mmHg,尿蛋白(++),胎児発育1468gと胎児発育遅延,妊娠中毒症所見が現れた.33週5日血圧141/94mmHg,尿蛋白(++),胎児発育1680gと今まで出現していなかった胎盤内に血腫の存在を認めた(血腫の大きさは長経41.6mm厚さ38.4mmの血腫)ため入院管理となった.入院後採血でも検査データは正常範囲であり,妊娠中毒症所見も血圧は130-140/70-80mmHg,尿蛋白(+)尿定量で73-58mg/mlで推移したが子宮収縮所見が出現したため,塩酸リトドリン50γ/hrにて点滴を開始.入院後,妊娠中毒症の所見は落ち着いたがその後血腫の大きさは徐々に大きくなり,35週1日長経48.6mm厚さ43.4mm,36週2日胎児仮死所見出現時には長経100.6mm厚さ100.4mmまで大きくなり,緊急帝王切開術を施行(児1730g,男児,Apger score 8-10-10)分娩となった.胎盤は凝血魂と梗塞層が認められ,Breus' moleと診断した.過去の報告を含め文献的考察を合わせて報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
367-367, 2003
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