|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
胎児・新生児(3) 胎児臍帯嚢胞を伴った18トリソミーの一例
市川 剛, 永井 宣久, 正岡 直樹, 栃木 明人, 山本 樹生
日本大学板橋病院産婦人科総合周産期母子医療センター
胎児の臍帯嚢胞は,極めて希な疾患である.妊娠初期のものは,自然消退し児の予後と関係がない事が多い.2nd trimester以降では,致死的染色体異常や,先天奇形との関連性がある.発生の起源としては,1)血管奇形 2)腫瘍 3)真性臍帯嚢胞(羊膜由来や胚子発達の過程での嚢胞の遺残)4)偽性臍帯嚢胞(ワイルトンゼリーの増加,浮腫)が挙げられている.今回我々は,18トリソミーに合併した臍帯嚢胞の一症例を経験したので報告する.症例は,36歳 一回経妊一回経産(29歳 妊娠10か月3232g女児 正常分娩)家族歴:先天奇形や染色体異常に関する特記すべき異常なし.現病歴:近医にて妊婦健診通院していたが妊娠25週頃より,羊水増加,臍帯の腫脹認め,同所見の増強があり,妊娠28週当院紹介受診となった.入院時検査所見:血液検査にてTORCH症候群などの感染はなく,超音波断層検査では,小脳径が正常下限で,低形成を,また,心構造上,心室中隔欠損,両大血管右室起始を疑った.胃泡は確認できず.停留睾丸及び,overlapping fingerの所見を認めた.臍帯は2動脈1静脈で間質部が低エコー輝度な嚢胞様影で,直径50mmに腫大,胎児付着側から胎盤側近傍まで存在していた.腸管などの明らかな脱出認めず.妊娠28週5日,染色体異常を疑い十分なインフォームド・コンセントのもと羊水染色体検査施行し,18トリソミーであった.臍帯嚢胞は先天奇形と染色体異常の合併が予後決定の大きな要素となる.染色体異常と臍帯嚢胞の因果関係については,はっきりした見解はないが,同所見を有する妊婦の管理には染色体異常を念頭に置き注意深い管理が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
376-376, 2003
|