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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
奨励賞候補(1) 子宮体癌発生の背景としての精神疾患
高本 真弥, 中川 俊介, 兵藤 博信, 八杉 利治, 久具 宏司, 矢野 哲, 堤 治, 武谷 雄二
東京大学産婦人科
子宮体癌は排卵障害,ホルモン療法などがリスクファクターとして知られている.いずれもプロゲステロンの拮抗のない状態でのエストロゲン曝露(unopposed estrogen)を介して子宮内膜の増殖を促進し癌発生に至らしめると考えられている.一方,抗精神病薬の多くは生殖生理に関わる神経伝達物質の分泌,作用を攪乱し,結果としてunopposed estrogen状態を生じ子宮体癌を誘発し得ることが予想される.そこで抗精神病薬が子宮体癌のリスクファクターの一つとなる可能性に着目し過去の症例を検討した.当科において最近12年間の悪性腫瘍入院症例における精神疾患の合併を調べたところ抗精神病薬内服症例は子宮体癌(異型増殖症を含む)220例中7例(3.1%),子宮頸癌(高度異形成を含む)405例中3例(0.73%),卵巣癌264例中0例で子宮体癌に多い傾向にあった.子宮体癌7症例はいずれも子宮体癌診断以前から抗精神病薬を内服していた.月経異常(不順,過多)のある症例は4例,未妊3例で排卵障害がある可能性が考えられた.経産4例のうち2例は分娩以降に精神疾患を診断され抗精神病薬内服を開始していた.異型増殖症3例を除く腺癌4例は全て内膜のエストロゲン受容体陽性で内膜増殖促進が病態に関与している可能性が示唆された.子宮体癌のリスクファクターとして様々なconfounderを考慮することは当然であるが,少なくとも抗精神病薬の服用時に子宮体癌発生に留意すべきであることを強調したい.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
385-385, 2003
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