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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
奨励賞候補(2) 卵巣癌ハイリスク女性に対する予防的付属器切除術
市川 喜仁1), 平井 康夫1), 荷見 勝彦1), 宇都宮 譲二2)
癌研究会附属病院婦人科1), 癌研究会附属病院家族性腫瘍センター2)
近年,一般女性に比し卵巣癌罹患リスクの高い,家族性乳癌・卵巣癌家系(以下,乳癌・卵巣癌家系)女性の存在が明らかになってきた.原因遺伝子(BRCA 1,BRCA 2)も発見され,乳癌・卵巣癌家系の10-30%にこれらの遺伝子変異を認めるとされる.欧米の一部施設では,乳癌・卵巣癌家系の女性,あるいはBRCA 1,BRCA 2変異を有する女性に対し,挙児希望のないことを確認し,十分な遺伝カウンセリングを行った後に,予防的付属器切除手術(以下,予防的手術)が卵巣癌の有効な予防手段のひとつとして行われている.一方,予防的手術においては,術後のエストロゲン補充療法の必要性,コンプレックス発生の危険,などへの対応も考慮しなくてはならない. 今回我々は,当院家族性腫瘍センターに登録された乳癌・卵巣癌家系において,卵巣癌罹患リスク減少のために予防的手術を希望された女性を経験した.本例に対する我々の取り組みを報告するとともに,今後の卵巣癌ハイリスク女性に対する予防的手術について検討する.症例は47歳,1経産婦.45歳時に両側乳癌手術.現在再発兆候はないが,4cm径の右卵巣嚢腫を指摘され,乳癌再発予防のためのホルモン療法は中断.家族歴は母(68歳),母方おば(52歳)が卵巣癌,母方祖母(50歳台)が乳癌,母方おじ(70歳)が胃癌に罹患.現在,遺伝カウンセリングと並行して,インフォームド・コンセント取得後のBRCA 1,BRCA 2遺伝子診断を計画中である.我々は,予防的手術が卵巣癌罹患リスク減少だけでなく,女性ホルモン遮断による乳癌再発予防にも効果的と考え,当院Tumor Boardに予防的手術の審議を申請中である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
387-387, 2003
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