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第106回学術集会(平成15年10月5日)

【一般演題】
奨励賞候補(4)
切迫早産治療期間が妊娠32週未満の早期産児予後に与える影響の検討


佐野 裕子, 澁谷 裕美, 橋本 玲子, 望月 朋子, 鈴木 典子, 尾崎 恒男, 酒井 謙, 酒井 啓治, 土屋 清志, 岩下 光利, 中村 幸雄
杏林大学産婦人科


 【目的】妊娠32週未満の切迫早産治療の目的の一つは,胎児の未熟性を解決することである.このため妊娠期間の延長が基本的な治療方針であった.しかし,切迫早産と感染症,炎症反応の病態が密接な関係にあることが明らかになり,妊娠期間の延長を一義的としない治療管理が必要になってきた.そこで切迫早産の治療期間と妊娠32週未満の早期産児予後について,当院の成績を後方視的に検討した.
 【方法】平成10年から平成13年の間に当院で分娩した妊娠32週未満の新生児114児を対象として検討した.切迫早産の治療期間の長さ別に,子宮内胎児感染および胎児傷害と関係が強い臍帯炎,慢性肺疾患3型の発生を検討した.原則として入院48時間を超えて子宮収縮抑制剤は使用せず,頚管縫縮術も行わない治療管理下で検討した.
 【成績】新生児114児のうち生存80児,死亡30児で生存率は73%であった.胎児付属物の病理検査を行った症例の中で臍帯炎は,治療管理48時間以内の出生児4例/29例(13.8%),48時間以降1週間以内4例/15例(26.7%),1週間以降6例/37例(16.2%)で認めた.慢性肺疾患と診断した症例の中で3型は,治療管理48時間以内の出生児2例/17例(11.8%),48時間以降1週間以内4例/6例(66.7%),1週間以降6例/18例(33.3%)に認めた.
 【結論】妊娠32週未満の切迫早産治療を計画する場合には,胎児の未熟性を解決するために妊娠期間を延長する治療管理だけでは不十分である.子宮内胎児感染または炎症反応による胎児傷害,新生児異常の可能性についても検討が必要である.早産児の予後を考えると,胎児の未熟性が与える影響と子宮内胎児感染または炎症反応が与える影響は,妊娠期間の延長により相対的に変化している.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3) 392-392, 2003


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