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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
奨励賞候補(5) 人工妊娠中絶を機に発症した血栓性血小板減少性紫斑病の1例
菊地 真紀子, 木戸 道子, 宮内 彰人, 石井 康夫, 照内 忠晴, 安藤 一道, 杉本 充弘
日本赤十字社医療センター産婦人科
妊娠中期中絶を機に発症したと思われる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の1例を経験したので報告する.症例は35才,1経妊0経産.既往歴に特記事項なし.妊娠19週2日,妊娠中期中絶を希望し近医を受診.頚管拡張後にPGE1膣錠が投与され児を娩出した.以後5時間経過観察し,異常が認められないため帰宅したが,その6時間後に気分不快,動悸,心窩部痛が出現し,当センターに救急搬送された.来院時,プレショック症状,顔面・四肢の紫斑が認められた.外性器出血なし.内診にて異常なし.子宮腔内に明らかな遺残組織なし.骨盤内出血所見なし.血液生化学的検査では,著明な炎症所見,血小板減少(2.7万)を伴うDIC,LDH高値(2762IU/L),腎機能傷害が認められ,尿蛋白強陽性,尿潜血陽性であった.敗血症性ショック及びDICと診断され,カテコラミン,抗生剤,免疫グロブリン,血小板,新鮮凍結血漿,アンチトロンビン,蛋白分解酵素阻害薬が投与された.しかし凝固能改善にも関わらず,血小板減少と腎機能傷害は更に増悪し幻覚や幻聴が出現.また末梢血中に破砕赤血球が認められたため,TTPが疑われ,第4病日より血漿交換療法が施行された.以降,血小板減少は急速に改善し,精神症状も消失した.第8病日よりプレドニゾロンとアスピリンが投与され,全身状態は順調に改善し,第32病日に退院となった.TTPは比較的稀な疾患であるが,妊娠は発症のリスク因子の一つであり,無治療の場合には致命的とされる.しかし早期の血漿交換療法により予後は著明に改善されることから,周産期の血小板減少性疾患においては本症も念頭において対応することが重要であると考えられた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
394-394, 2003
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