|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
奨励賞候補(5) 重症妊娠中毒症における母体脳MRI異常の分析
坂口 健一郎, 松田 秀雄, 川上 裕一, 芝崎 智子, 高橋 宏典, 吉田 昌史, 中治 陽子, 吉永 洋輔, 田中 壮一郎, 古谷 健一, 菊池 義公
防衛医科大学校産婦人科
【目的】近年,子癇発作時の脳MRI異常については注目されてきているが,脳異常が何時発生するかについては明確に知られているわけではない.重症中毒症症例で,脳症状の有無にかかわらずMRIを撮影し,臨床生化学的所見と比較した.【方法】2001年1月から2003年6月の期間で,日本産婦人科学会の基準で重症妊娠中毒症と診断し,同意を得た35症例でMRIを撮影した.異常所見あり群と異常所見なし群とで臨床血液生化学的所見を比較した.SPSS統計解析ソフトを用い,t-testで臨床生化学所見との関連を検討し,有意差の得られた2変数でステップワイズ判別分析を施行,異常所見の発生に対する統計的予知率を解析した.【結果】全35症例で8例(22.8%)に脳MRI異常を認めた.2例に子癇を認めた.臨床血液生化学的所見21変数のうち,異常所見あり群で拡張期血圧(p=0.008)と血中GOT(p=0.028)の2変数で有意に高値を認めた(検出率>90.0%)が,年齢,尿蛋白,尿酸値,AT-III,BMI,出生体重等18変数では有意差を認めなかった.ステップワイズ判別分析ではz=0.006×(GOT)+0.099×(拡張期血圧)-10.450と線形を得,この2変数を用いて脳MRI異常に関して90.0%の統計的予知率を得た.【考察】重症中毒症では,脳症状の有無に関わらず脳MRI異常が高頻度に認められた.脳異常の蓄積が子癇や皮質盲を惹起すると考えられることから,脳異常を認めた場合には速やかな治療が必要である.よってMRIは重症中毒症管理上,必須項目として注目される.特に拡張期血圧が上昇し,GOTが高値を示す群では厳重な注意が必要である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
396-396, 2003
|