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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
奨励賞候補(6) 胎児腎病変:一側MCDK・他側高輝度腎で特異な羊水量の変化を呈した症例
鈴木 寛正, 桑田 知之, 渡辺 尚, 泉 章夫, 山中 尋子, 小田切 幸平, 高橋 寿々代, 松原 茂樹, 鈴木 光明
自治医科大学産婦人科
胎児多嚢胞性異形性腎(MCDK)は通常一側腎にのみ発生し,他側は一般に健常であるため,妊娠経過,胎児well-beingに影響しないとされる.今回特異な経過を示したMCDK胎児の症例を経験した.本症例は一側MCDKの胎児で,他側腎が高輝度Echo(急性腎不全のEcho像)を示し,同時に羊水量が減少,消失.その後羊水量は増加し健児を得た.症例:22才,初妊婦.妊娠19週,胎児腎嚢胞で紹介.精査にて左側のMCDKと診断.他の異常は認めず,その後外来管理していたところ,妊娠22週より羊水減少傾向出現し,24週には羊水が全く観察されなくなった.破水は否定.この時点での対側腎は高輝度Echoを呈し,新生児の腎不全腎のEcho像と酷似していた.一側MCDK(無機能腎)で他側高輝度腎,羊水なしということで児の生命予後も危惧された.しかし妊娠26週,羊水量は漸増,28週より羊水量は正常化した.この時点で活発な呼吸様運動を認め,肺低形成を疑わせる所見はなかった.児の発育は妊娠34週頃より鈍化し,発育遅延も認めた(原因として臍帯過捻転を推定).妊娠37週,胎児仮死のため帝王切開.児は1680g,女児.出生後の超音波検査では,左側のMCDKと右側の高輝度Echo,及び小嚢胞を認めた.尿量,腎機能とも正常で,日齢53に退院した.本症例の病態生理は不明である.が,1)一側MCDK(無機能腎)で,2)他側腎に高輝度Echoが出現し,3)それと同時に羊水は消失し,4)多尿期に相当する頃に羊水が復活した.以上より,MCDK胎児の健側腎に何らかの要因で急性腎不全がおこり,その無尿期〜多尿期を観察していた可能性がある.胎児腎Echo所見と羊水量の変化を追跡したdataはなく,本例は胎児腎病変推察への1示唆を与える.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
398-398, 2003
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