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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【ランチョンセミナー1(11階・会議ホール・風)】
1.婦人科腹腔鏡下手術の最前線―そのトレーニングと実践から―
安藤 正明
倉敷成人病センター
近年の腹腔鏡機器の発達と手術技術の向上により,複雑な手術手技も腹腔鏡下に行われるようになってきております.私どもの腹腔鏡下手術の導入は機器が充実してきた比較的最近(1997年)であるため,過去から言われていた鏡視下手術の限界をあまり意識することなく,腹腔鏡下手術を開始しました.その後は従来法の開腹手術のうち,どこまでこの低侵襲な腹腔鏡下の術式で再現が出来るかを課題として,これまで取り組んできました.そして6年が経過し2,000例余りに腹腔鏡下手術を施行して参りましたが,現在では良性疾患の多くは鏡視下に行うことが可能であると感じるようになっております. 実際,当院では昨年度の子宮全摘出術の3%のみが開腹で行われています.また,この低侵襲手術で最も恩恵を受けるのは最もradicalな手術を受ける患者さんであると考え,良性疾患のみならず,婦人科悪性腫瘍手術にも積極的に内視鏡手術を導入してきました.術後の回復は極めて早く,早期離床が可能であることにより,社会復帰も早く,また悪性疾患においては術後治療の遅れを防ぐことにもつながります. 修復・再建術の低侵襲化も試みております.もしも術中損傷が起きた場合には,その修復術は元の手術よりも侵襲が大きくなることもあり,修復術の低侵襲化も重要な課題と考えています.このような修復術には体腔内縫合・結紮(intracorporeal suturing)の技術は必要不可欠です.この腔内縫合は腹腔鏡下手術の限界を取り除き,新たな鏡視下手術の発展に繋がる可能性もあります.このようなadvanced laparoscopic surgeryにおいて手術を安全に行うためのトレーニング法に関しましても触れたいと思います. 腹腔鏡下手術では立体視出来ない2次元映像下に拡大された術野で手術を行うことになり,従来の開腹手術とは異なった手術環境となります.鉗子の動きの制約,内視鏡の死角といった手術の困難性を増す要因も有り,低侵襲性が謳われているのにもかかわらず,逆説的ですが重症合併症も開腹術よりも多くなるのが通常です.また,合併症の予防は腹腔鏡手術の最も重要な課題であり,局所解剖の理解,電気機器の知識,鉗子操作のトレーニング,hand-eye coordinationの確立が安全な手術を行うための必要条件となってきました. このような背景の下,私どもの行っている手術術式として(1)良性疾患では子宮全摘出術(TLH),筋腫核出術(LM),性器脱に対するpelvic reconstructionをご紹介します.(2)悪性疾患手術としては,後腹膜鏡を用いた傍大動脈・骨盤リンパ節郭清と広汎性子宮全摘出術.また新たな手術展開として(3)術中臓器損傷の鏡視下修復術(動物シミュレーションとその臨床応用):A.尿管損傷に対するureteroneocystostomy,B.腸管損傷の修復,C.血管損傷修復術.最後に新たな手術法として(4)radical pelvic dissectionと再建術を組み合わせた浸潤子宮頚癌に対する妊孕能温存術式total laraoscopic radical trachlectomyについてもご紹介します. 今回は,上記の手術手技の実際についてをビデオで供覧しつつ現況についても触れたいと思っております. 他に特筆すべき点としては,腸管合併症が少ないこと,出血量が少ないことなども挙げられます.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
402-402, 2003
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