|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【シンポジウム ―生殖医療と周産期医療の連携を求めて―】
基調講演 生殖医療の現状とその問題点
斎藤 英和
国立成育医療センター・周産期診療部・不妊診療科
近年の生殖医療技術の進歩により,今まで妊娠できなかった多くの方が妊娠できるようになった.しかし,近年のライフスタイルの変化により,晩婚化,少子化,若年者の性病罹患の変化や,子宮内膜症の増加や男性不妊因子の増加など,生殖医療技術に求められる必要性が増加している.このような環境のなかで,不妊治療を行うものにとっては,この生殖医療技術が生物学的ばかりでなく,社会学的にも受け入れられやすい状態に導く義務がある. そこで,まず,日本の生殖補助医療技術の現状,問題点,特に多胎妊娠につき,現在,既出されている統計を検討,さらに,日本産科婦人科学会に登録されている,生殖補助医療を行っている施設にアンケートを行い分析した. 母子保健の主なる統計でみると,平成13年の分娩件数は1,195,616件で,そのうち複産が12,218件であった.一方日本産科婦人科学会倫理委員会・登録・調査小委員会の報告では,平成12年に生殖補助医療で新鮮胚を用いた治療成績と凍結胚を用いた治療成績の合計は,分娩数が10,005件,複産分娩数は不明だが,多胎妊娠数は2307件であった.この生殖補助医療で多胎となった症例全例が,複産となるわけではないが,仮に,全部が複産となったし,さらに,大多数が平成13年に出生したわけであるが,どの時期の治療でも同じ率で多胎妊娠が発生したとすると,複産の18.8%が生殖補助医療により,出生したことになる. また,日本産科婦人科学会,生殖・内分泌委員会のボランティアベースでの生殖医学登録では,有効個別調査票数は21,921症例と倫理委員会の症例数に比較すると少ないが,多胎妊娠に関しより詳しい調査がなされている.新鮮胚を用いた胚移植では胚移植数と妊娠率との関連は20.4%(1個),23.4%(2個),28.2%(3個),25.7%(4個),25.0%(5個),29.9%(6個以上)であった.これを9年前,平成3年と比較すると8.2%(1個),16.4%(2個),24.5%(3個),30.7%(4個),27.5%(5個),33.9%(6個以上)であり,最近では,1個または2個の胚移植でも比較的良好な妊娠が得られていることが判明した.また,胎児数と出産時の児の体重の検討より,単胎では,8.5%が2,500グラム未満の児であるのに対し,双胎では73.1%,品胎では89.2%が2,500グラム未満の児であり,胎児数が増加すると,出生児に体重が減少した. 今回の発表では,その他の多胎に関わる,問題点につき,概説するともに,患者や不妊治療を行う医師の多胎に対する意識について,また,生殖補助医療行う施設での説明書における多胎の説明がどのように説明されているか,調査したので,これについても発表したい.日産婦関東連会報 第41巻2号 2004. 略 歴 1979年3月山形大学医学部医学科卒業 6月山形大学医学部助手 1981年5月―1982年10月米国・南カリフォルニア大学 1985年医学博士学位取得(山形大学) 1987年日本産科婦人科学会認定医 1991年4月山形大学医学部付属病院講師 1995年4月山形大学医学部助教授 2002年3月国立成育医療センター 周産期診療部・不妊診療科・医長
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
116-117, 2004
|