関東連合産科婦人科学会
会員ログイン 代表挨拶
総会・学術集会
学会誌
定款
公告
利益相反
役員構成
事務局案内
求人施設一覧
関連リンク

 関東連合産科婦人科学会会誌 オンラインジャーナル

<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る

第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【シンポジウム ―生殖医療と周産期医療の連携を求めて―】
3.多胎妊娠と周産期医療


左合 治彦
国立成育医療センター・周産期診療部・胎児診療科


 我が国の出生数は過去30年間年々減少している.一方多胎妊娠の出生数は不妊治療が普及した後年々増加している.多胎の頻度は,出生数の0.65%であったが,2001年には119.6万分娩に対して,多胎が1.2万人と1.02%に増加した.多胎妊娠では早産,低出生体重児,子宮内胎児死亡,妊娠中毒症のリスクが高く,双胎から品胎,要胎と胎児数が増えるほどリスクは高くなり周産期予後は不良になる.また双胎でも二絨毛膜二羊膜双胎(DD)に比べ,一絨毛膜二羊膜双胎(MD)は胎盤吻合血管による双胎間の血流不均衡を生じやすく,周産期死亡や脳神経障害をきたしやすい.典型例は双胎間輸血症候群(TTTS)で,妊娠中期に発症した場合の予後はきわめて不良である.当センターにおける多胎妊娠の周産期予後と無心体双胎やTTTSに対する新しい治療法を解説し,多胎妊娠と周産期医療について考察する.
 平成14年3月の当センター開院以来,平成16年2月までの2年間の分娩数は2402件であった.そのうち多胎妊娠は113例(全分娩数の4.7%)で,双胎108例(DD:68例,MD:35例,無心体:2例),品胎5例であった.不妊治療例は双胎47例(44%)で,品胎4例(80%)であった.自施設不妊治療は双胎1例のみで,50例(98%)は他不妊治療施設からの紹介例であった.胎児死亡は,1児死亡がMD双胎で8例,DD双胎で1例みられた.胎児奇形が3例にみられた.早産率はDD双胎:52%,MD双胎:79%,品胎:100%であった.帝王切開率は78%であった.
 無心体双胎は,無心体児が健常児から供給される血流で生存するため健常児に心負荷がかかり,羊水過多,胎児水腫をきたす予後不良な疾患である.治療法としては無心体児の臍帯血流遮断術が行なわれる.侵襲度の低い方法として超音波ガイド下ラジオ波凝固術があり,我々は4例に施行し比較的良好な結果を得ている.また双胎間輸血症候群はきわめて予後不良な疾患で,治療法としては羊水吸引除去術がおこなわれているが満足する成績は得られていない.そこで我々は平成15年2月に胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を導入し,1年間に7例施行した(妊娠17―24週).分娩に至った6例中,5例は妊娠30―36週で分娩し,生後児の経過は良好で神経学的に特に異常を認めていない(1児生存4例,2児生存1例).妊娠26週未満に発症する重症な双胎間輸血症候群に対して今後大いに期待できる治療法である.
 無心体やTTTSに対する新しい治療法が導入されたが,多胎妊娠のリスクは依然高く,年々増加している多胎妊娠の管理は周産期医療の大きな課題である.不妊治療例による多胎妊娠は少なくなく,周産期医療の現状も理解しながら慎重に生殖医療が行なわれることが望まれる.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 122-123, 2004


一般社団法人関東連合産科婦人科学会事務局 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-7 麹町パークサイドビル402 株)MAコンベンションコンサルティング内
TEL:03-3288-0993 FAX:03-5275-1192 E-mail:kantorengo@jsog-k.jp
Copyright (C) 一般社団法人関東連合産科婦人科学会