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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【シンポジウム ―生殖医療と周産期医療の連携を求めて―】
4.高齢妊娠と周産期予後
大浦 訓章
東京慈恵会医科大学・産婦人科学講座
妊婦年齢の高齢化は,女性の高学歴化・就職率の増加・晩婚化などライフスタイルが近年の社会経済的環境により多きな影響を受け,変化していることが最も関連している.このことに加え,最近の生殖医療の進歩により高年婦人の妊孕性を高めるさまざまな技術が提供されており,この40年間で35歳以上の妊産婦は2倍以上増え,今では約1/8を占めるようになった.1992年日本産科婦人科学会は高年初産婦の定義を35歳以上としたが,高年妊産婦を何歳以上にするかは決められていない.高年齢は妊娠母体あるいは胎児に対しハイリスクであることは数多く報告されている.すなわち,母体においてはその妊娠・分娩・産褥の全期間において産科的異常あるいは婦人科的・内科的合併症を来しやすく,また流産・早産あるいは染色体異常・発育遅延など,その胎児・新生児への影響も少なくない.糖尿病,高血圧,肥満などの生活習慣病は加齢とともに増加し,最近これらの若年齢化がみられるようになった.本シンポジウムにおいては 1,高年妊産婦の状況を示し,頻度の多い合併症,妊娠・分娩ならびに胎児・新生児に及ぼす影響とその診断・対処法 2,高年妊産婦の栄養管理 (1)妊娠前の栄養管理:周産期合併症を減らす妊娠前のBMIによる体重指導と必須摂取ビタミン (2)妊娠中の栄養管理と産科合併症 3,生殖医療との連携 (1)妊娠許可できない症例に対し不妊治療施行,周産期医療において中絶を拒否し,妊娠継続した症例提示 (2)多胎妊娠を避けたい症例 (3)生殖医療との連携の今後の課題 について話を進めていく. 高年女性にとってはその妊娠は数少ない貴重なものであり,特に生殖医療を受け妊娠を継続することはかなり不安を持ち生活を送っている.高齢妊産婦のリスクを知り,適切なインフォームドコンセントのもと無用な不安を払拭し,妊婦とともに慎重かつ厳重な管理をすることによって,安全かつ幸せな妊娠・分娩そして育児を手助けすることができる.また生殖医療との連携をすることによって,合併症をもつ高年の女性にとって,どのような時期の妊娠が望ましいのか,単胎妊娠が望ましいのかを,生殖医療医,産科医,合併症の管理を行っている医師との話し合いを持って決定していくことが,母児にとってよりよい管理を行うために必要だと考えられる.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
124-125, 2004
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