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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))

【一般演題】
卵巣腫瘍1
子宮内膜症性卵巣嚢胞のアルコール固定術後に発症した卵巣癌の1例


岩澤 有希, 坂巻 健, 田島 敏樹, 松村 英祥, 越野 哲郎, 内田 律子, 甲賀 かをり, 井上 丈彦, 長阪 恒樹
武蔵野赤十字病院産婦人科


 【緒言】子宮内膜症は悪性腫瘍の発生母地と考えられており,その0.7〜1%に悪性化変化が起こるとされている.特に卵巣子宮内膜症が全体の約80%を占めることから,子宮内膜症性卵巣嚢胞ではその診断,治療法の決定に注意が必要である.一方で,本邦では薬物療法の普及,アルコール固定術等の処置により,長期間組織学的な検討がなされずにいる症例が増加していると思われる.今回我々は,子宮内膜症性卵巣嚢胞のアルコール固定術後に卵巣癌となった症例を経験したので報告する.【症例】53歳0回経妊0回経産.閉経50歳.平成11年3月(48歳),左子宮内膜症性卵巣嚢胞に対し,他院でアルコール固定術を施行.以後,子宮内膜症に対し定期的に経過観察されていた.平成15年10月,近医でMRI施行したところ,左卵巣嚢腫を指摘された.3ヵ月後のMRIで卵巣嚢腫の増大,造影効果を伴う壁在結節を認め,卵巣癌が疑われたため,精査加療目的にて当科紹介受診し,手術方針となった.術中迅速病理診断では明細胞癌であり,根治手術を施行した.【結語】子宮内膜症性卵巣嚢胞が疑われた場合,治療法の決定に明らかな判断基準はなく,患者の年齢や挙児希望の有無,画像診断,腫瘍マーカーなどにより総合的に判断され,決定されている.しかし,子宮内膜症は悪性腫瘍の発生と密接に関係し,また,子宮内膜症性卵巣嚢胞の診断から10年以上経過し,かつ腫瘍が6cm以上の場合,卵巣癌発症のリスクが高いとの報告があることなどから,今後悪性化のリスクの高い症例を識別し,組織学的な診断を行うことが重要であるとともに,薬物療法やアルコール固定術のように組織学的検討を行わない場合には一層厳重な経過観察が必要である.


日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2) 142-142, 2004


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