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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍1 初回治療から20年を経て再発した上皮性卵巣癌の1例
山本 晃人, 黒瀬 圭輔, 山口 昌子, 石川 温子, 土居 大祐, 米山 剛一, 竹下 俊行
日本医科大学産婦人科
卵巣癌は婦人科癌のなかでは予後不良な疾患であり,治療後も比較的高い確率で再発を来たすことが知られている.今回,初回治療後20年を経過して再発を来たした上皮性卵巣癌の1例を経験したので報告する.症例は56歳,0経妊,0経産.20年前に卵巣癌stage III(serous cyst adenocarcinoma)の診断にて,腹式単純子宮全摘術,両側付属器摘出術,大網切除術を行ない,その後追加化学療法を6回行っている.以後当科外来にて10年間経過観察したが再発所見は一度も認められなかった.今回,下腹部痛が持続したため近医を受診したところ画像診断にて骨盤内腫瘍が認められ,精査,加療目的にて当科紹介となった.腹腔内には直径5cm大の腫瘍が3個あり,画像診断では古い血液の貯留が考えられたが,既往卵巣癌の再発も否定できなかった.開腹時,腹腔内に癒着はみられるものの,強く癌性腹膜炎を示唆する所見は認められなかった.また腫瘍内容液は古い血液であり,腫瘍壁は平滑であった.摘出物の病理学的検討では,psammoma bodyを伴った変性組織が多数見られ,一部には異型性を伴った腺上皮の増生がみられる点から,腹膜に播種されたadenocarcinomaが存在し,このうち広い範囲が治療の影響や時間経過によって変性しているが,一部にはviableな腫瘍細胞の残存を伴っていると考えられた.現在追加化学療法を施行中である.今回初回治療より20年を経過して再発した上皮性卵巣癌を経験した.卵巣癌治療後の管理においては,長期間経過後の再発も可能性に入れて管理することが大切である.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
143-143, 2004
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