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第107回学術集会(平成16年6月20日(日))
【一般演題】
卵巣腫瘍2 卵巣明細胞腺癌における血栓症の発症機転に関する考察
有本 貴英, 中川 俊介, 岡江 美希, 山口 俊一, 八杉 利治, 久具 宏司, 矢野 哲, 上妻 志郎, 武谷 雄二
東京大学附属病院産婦人科
血栓症は卵巣癌の周術期治療において最も重要なリスクファクターの一つである.周術期に血栓症を発症した症例は,血栓症のない症例と比較して予後不良であるとする報告も多い.一方,上皮性卵巣癌の中でも特に予後不良の組織型として知られている明細胞腺癌において,血栓症の合併が多いとする報告が散見される.しかしその発症機転に関しては現在のところ全く明らかになっていない.そこで我々は当院において1991年から2003年までに新規登録された上皮性卵巣癌症例219例に対し,病理組織分類別の血栓症発症率を検討した.その結果,明細胞腺癌症例での血栓症発症率は22%(11/50)であったのに対し,他の上皮性卵巣癌症例では4.7%(8/169)であり,有意差を認めた(p=0.00014).血栓症合併症例の中でclear cell componentの有無による比較を行ったところ,年齢,腫瘍径,BMI,血小板数,部分トロンボプラスチン時間,血中フィブリノーゲン濃度では明らかな差を認めなかったものの,clear cell componentを有する症例の方が有さない症例に比し進行期が早期のものが多く(I期症例の割合各54%/0%),また術前発症の血栓症(69%/50%),子宮内膜症の合併(39%/0%)の頻度が高く,プロトロンビン時間が長い(12.36±0.68sec/11.62±0.57sec)傾向が見られた.また明細胞腺癌症例の中で,血栓症合併症例は血栓症を有さないものと比較してBMIが大きく(24.1±3.0/20.9±2.4),生存期間の短い(5年生存率31.7%/69.0%)傾向が認められた.これらの因子が血栓症の発症にいかに関与するか,さらに詳細な検討を行い報告する.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 41(2)
147-147, 2004
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